研究課題
地球の外核は、地震波観測と衝撃圧縮実験の結果から純鉄の密度に比べ約10%低く、弾性波速度で約3%程度速いことが報告されている。本研究では、Fe-S系およびFe-Si系合金メルトの密度と弾性波速度を測定し、観測結果と比較することで外核組成を推定することを目的としている。今年度は、これまで測定を行ってきたFe-SメルトやFe-Siメルトの弾性波速度と比較するため、我々が開発したマルチアンビル型高圧発生装置と超音波法を組み合わせた手法(Nishida et al. 2013)を用いて、Feメルトの弾性波速度測定実験を5GPaまで行った。同じ温度圧力条件で、これまで行った測定結果と比較すると、Fe-Siメルトは、Feメルトに比べ速く、Fe-SメルトはFeメルトに比べ遅いことがわかった。一方、本研究で得られたFeメルトの弾性波速度は、これまで報告されている1気圧と衝撃圧縮実験を基にした純Feメルトの弾性波速度に比べ系統的に速いことがわかった。回収試料の熱電対の位置を調べたところ、予想よりもヒーターの中心から大きく外れており、この系統的なズレは、温度と圧力を低く見積もっていることが原因であることがわかった。これまでのFe-S系メルトやFe-Si系メルトの測定でも、ほぼ同じ高圧セルを使用しており、今後、熱電対の指示温度と試料中心の温度差の補正を行い、温度、圧力の絶対値を正確に求める予定である。また、10GPaを超える高圧下において、鉄合金メルトの弾性波速度測定を可能とする高圧セルの開発も行った。高圧セルの構成の最適化を行い、現時点で11 GPa での Fe60S40 メルトの弾性波速度測定に成功した。まだまだ改善点が多くあるが、さらに高圧セルに改良を加え、幅広い圧力、組成で実験を行っていく予定である。
(抄録なし)
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