研究課題/領域番号 |
12J07941
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
廣田 佳久 神戸薬科大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ビタミンK / UBIAD1 / 脳神経細胞 |
研究概要 |
ヒトが、食事から摂取するビタミンKの90%以上はphylloquinone(PK)であり、体内の組織中に存在するビタミンKの大部分はmenaquinone-4(MK-4)である。これまでに、ヒトやマウスの脳に、MK-4がビタミンK標的組織である肝臓や骨よりも高濃度に存在すること、投与したビタミンKが脳に移行しMK-4が生合成されることを報告している。また最近、申請者らはこの生合成を担う酵素がUbiA prenyltransferase domain containing 1(UBIAD1)であることを世界に先駆けて報告した。しかし、脳内にMK-4が高濃度に存在する理由は明らかでなく、脳におけるビタミンKの生理作用については十分に解析されていない。そこで、申請者は脳神経変性疾患と脳におけるMK-4生合成の意義を解明するため以下の検討を行った。これまでに、UBIAD1遺伝子のターゲティングベクターを含むES細胞株の樹立に成功している。平成24年度は、UBIAD1遺伝子のExon-1の下流にネオマイシン耐性遺伝子を組み込み2個のloxPで挟んだターゲティングベクターを含むES細胞株を用いてUBIAD1^<flox/flox>マウスを作出した。さらに、作出したUBIAD1^<flox/fiox>マウスに、Creマウスを交配させ、全身的にUBIAD1発現が欠失したUBIAD1^<-/->マウスを作出した。作出したUBIAD1^<-/->マウスに関しては、現在全身的な表現型の解析を行っている。また、脳神経特異的に発現する遺伝子nestinのプロモーター領域にCre発現ユニットを有するマウスとUBIAD1^<flox/flox>マウスを交配し、脳神経特異的にUBIAD1活性を欠損する△UBIAD1^<nestin/nestin>マウスを作出した。作出したマウスは、ビタミンKの脳神経細胞の分化に対する作用を検討するため、マウス胎仔から神経幹細胞を初代培養し脳を中心とした表現型解析を行っている。このように、申請者はビタミンKの脳における生理作用をUBLAD1遺伝子欠損動物および細胞を用いて解析する。本研究は、ビタミンK作用の解明に重要な知見を与えるものであり、ビタミンKの有効性を分子栄養学的観点から立証することで、アルツハイマー病などの脳神経変性疾患の予防戦略に有益な情報を提供できるものと確信する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった、UBIAD1^<-/->マウスおよびΔUBIAD1^<nestin/nestin>マウスの作出に成功し、順調に継代飼育を行なっており、表現型解析から新たな知見が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
作出したUBIAD1^<-/->マウスおよびΔUBIAD1^<nestin/nestin>マウスを用いて、脳神経幹細胞の分化に対する影響を検討する。脳神経幹細胞の分化にUBIAD1が関与することが確認出来た後に、その細胞に対して、ビタミンKを添加することでUBIAD1欠損による脳神経幹細胞分化への改善効果を検討する。脳神経細胞は、胎生期の脳に存在する神経幹細胞を前駆細胞として、発生過程に応じてニューロンやそれを機能的に支持するグリア細胞であるアストロサイトやオリゴデンドロサイトへ分化するように制御されている。この脳神経細胞の分化メカニズムにおいて、UBIAD1がどこに関与するかを詳細に検証する。
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