選好の多様性のモデル化 選好の多様性のモデル化に関して、分位点回帰モデルを用いた二つの研究を実施した。一つは可変係数を含む分位点回帰モデルの操作変数推定であり、Singapore Management大学のLiangjun Su氏との共同研究である。本研究は8月にスウェーデンで開催されたEcenometric Society European Meetingにおいて、その研究成果を発表した。その後、国際誌Journal of Econometricsへ投稿し、一時査読を通過した。現在は二次査読に向け最終稿を準備中である。またもう一つの分位点回帰モデルとして、線形項を含む加法的モデルの考察を単独で行った。これまで、同様のモデルに関する研究は多く実施されてきたが、それらの多くは共変量の連続性を前提とした制約的なものであった。そこで、本研究では、離散的・質的共変量を同時に取り扱うことが可能となるようモデルの拡張を行った。本研究は国際誌Journal of Nonparametric Statisticsへ投稿され、現在二次査読中である。 欠損データへの対処 社会科学においてデータを用いた分析を実施する際、欠損データの問題は不可避である。この問題に対して、特に二肢選択モデルの反応変数が欠損しているケースに着目し、部分識別の方法を用いた新たな対処法を考察した。本研究の研究成果を神戸大学等のセミナーで報告した後、国際誌Economics Lettersに投稿、採択された。 シミュレーションを用いた条件付積率制約モデルの推定 多項プロビットモデルや、ランダムパラメータロジットモデルなど、経済評価分析で用いられる多くの手法は多重積分を含み直接計算できないため、シミュレーションによる近似が必要となる。本研究では特に推定パラメータの識別に関して恣意的な仮定を必要としない条件付積率制約に基づいた推定方法を提案した。本研究は国際誌Econometrics Journalへ投稿され、現在一次査読中である。
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