研究実績の概要 |
平成25年度の結果を踏まえ、平成26年度には、変異Notch3トランスジェニックマウスの大動脈、髄膜血管、腎血管などの血管でもF/Gアクチン比を測定した。すると、大動脈よりも細動脈などの小血管で野生型と変異型に有意差がみられることがわかった。これは、CADASILが脳小血管病であることと整合性がある。そこで、マウスの脳から血管平滑筋初代培養細胞(CVSMC)を採取し、Notch3変異が血管平滑筋機能におよぼす影響を調べた。 CVSMCを正常酸素圧および低酸素圧下で培養したところ、野生型と比べて変異型ではHIF1αの増加が優位に低下していた。また、この低酸素培養によりG-, F-actin比やα-Tubulinなどの細胞骨格タンパク量も変化することがわかり、以前western blottingの結果解析でα-Tubulinを補正に使用していたのは間違いであったことがわかった。そこで、今回の結果と前回の結果を再解析したところ、CVSMCでもiPS細胞由来平滑筋細胞でも、変異型の方が虚血侵襲によるHIF1αの増加が少なかった。つまり、CADASILの血管平滑筋は虚血に関する反応性が悪い可能性が示唆された。これは、iPS細胞由来平滑筋細胞を低酸素で3日間培養した時にCADASILで細胞死が優位に増加していたこととも整合性がある。ところが、Cultrex Directed In Vivo Angiogenesis AssayによりVEGFによる血管新生能を評価すると、野生型よりもむしろ変異型でより血管新生が亢進しているという結果が得られた。変異型マウスの脳梗塞モデルでより脳梗塞が悪化するという従来のデータとは相反する結果である。ただし、新生血管の構成細胞を詳しく調べたところ、変異マウスの新生血管ではPDGFRβの量が少ない、つまり壁細胞が少ない可能性が示唆されている。
|