研究課題/領域番号 |
12J07977
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
リ キョウ 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | ハイドロゲル / 電気泳動 / DNA / Tetra-PEGゲル |
研究概要 |
既存の分離媒体で最も分離能が優れているPolyacrylamide gelと新規分離媒体であるTetra-PEGgelの分離性能を比較したところ、Tetra-PEG gelは二本鎖DNALadder20-1000 bpをベース分離することが可能であり、より優れた分離能を示した。 Tetra-PEG gelの分画範囲はPolyacrylamidegelのそれより30%程度広かった。Tetra-PEG gelは小角中性子散乱測定により網目構造の高い均一性が確認されており、分離能の向上はこの均一性に起因する可能性が高い。ポリマー濃度(C)及び架橋点間分子量(Mc)が移動度(μ)と分離能に与える影響を評価した。既存の電気泳動理論では、分離に最も適した Reptationwithoutorientation領域では、移動度はdsDNAの塩基数(N)の逆数の1乗に比例すると考えられていたが、本研究ではゲルの構造条件により逆数の0.8-1.9乗に比例することが明らかになった。また、100-200bpの範囲で、移動度がDNAの塩基対数に依存しない遷移領域(Ogston領域からReptation without orientation領域への)が明白に観測されたことも同様にTetra-PEG gelの網目構造均一性に起因すると考えられる。Tetra_PEG gelは網目構造の極めて高い均一性により、従来の分離媒体より優れた分離能をもち、電気泳動理論の更なる発展のためのモデル分離媒体としても有益であることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
キャピラリゲル電気泳動の装置の作製、測定・制御プログラムの構築が完成したことにより、今後の研究の基礎ベースが完成した。また、本研究の難関の一つである二本鎖NDA用のゲル作製及び電気泳動用の緩衝液が開発されたことにより、二本鎖DNAの分離手法が確立された。
|
今後の研究の推進方策 |
今回作製したキャピラリ電気泳動装置で得られた知見を元に、スループットの高い装置を新たに作製し、実験の効率を数段回増やす。また、今回確立した二本鎖DNAの分離手法を一本鎖DNA、RNAの分離に生かすことが可能であるため、短期間でこれらの分離手法が確立すると考えられる。問題点として、Tetra-PEGgelの主鎖であるPEGとDNAの相互作用によるピークテーリングが挙げられるが、この解決方法として、ATRPまたはRAFT重合による主鎖の変更が考えられる。
|