研究課題/領域番号 |
12J07977
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
リ キョウ 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ゲル / 電気泳動 / DNA / Tetra-PEGゲル |
研究概要 |
複雑な網目構造を持つゲルやポリマー溶液は荷電した生体分子をサイズ分離するのに重要な媒体である。分離媒体の設計には泳動挙動の解明が必要である。しかしながら、従来の化学ゲルは一般的に不均一な網目構造を持ち、網目構造をポリマー体積分率(φ)や架橋点間鎖の重合度(N)といった単一のゲルの構造パラメーターで記述することができず、泳動のモデル化が困難であった。近年、当研究室は従来のゲルと比較して非常に均一な網目構造を持つTetra-PEGゲルを開発した。Tetra-PEGゲルは相互にPEGを主鎖にもち、相互に反応性を示す2種類の4分岐プレポリマーをA-B型カップリング反応させることで作製できる。本研究では、棒状高分子と見なせる20-160bp程度の持続長以下の二本鎖DNA (dsDNA)のTetra-PEGゲル、PEG溶液内で泳動挙動を解析した。移動度(μ)はφの指数関数であったが、K_rのDNAサイズ(n)依存性はOgstonモデルの予測と異なり、n^<0-0.34> のべき乗関数で、そのべき乗はNに依存した。Ogstonモデルは柔軟な網目構造内での棒状高分子の泳動には適応できないことが明らかになった。Nがμのn依存性を決定する一方で、φはDNAに対してnに依らない摩擦抵抗のように働きμの上限値を決定した。この結果から網目サイズをφから試算して材料の分離能を評価するという従来の試みが妥当でないことが明らかになった。さらなる解析の結果、当研究の実験範囲において、φが小さいほど分離時間が短く、Nが小さいほど分離能が向上すると結論付けられ、このような分離媒体を作製するには、均一な網目構造が必要不可欠であることが明らかになった。均一な網目構造は網目構造内での物質のダイナミックスを理解するのに重要なだけでなく、高分離能を有する分離媒体としても有望である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
二本鎖DNAに関する体系的なデータ取得が可能となり、一本鎖DNA、タンパク質に対してもおよそデータの取得が可能となりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
体系的なデータ取得により、従来では不明とされた様々な分離現象を解明していく予定である。具体的には、二本鎖DNAより持続長がより短い一本鎖DNA、また形状が球形である球状タンパク質を用いて、それらの泳動挙動を解明していく。
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