研究概要 |
多重積分の数値計算法として、(擬似)乱数列を用いたモンテカルロ法が知られているが、収束が非常に遅い問題点を持つ。そこで、より強い一様性を有した点集合に置き換えて高速化を図る準モンテカルロ法が用いられてきた。平成25年度は、主に、準モンテカルロ点集合に関する以下の研究成果を得た。 1. 最近、松本-斎藤-Matobaにより、準モンテカルロ点集合の評価指標WAFOMが提案された。WAFOMは高速計算可能であるため、ランダムサーチにより点集合を探索する方針が可能となる。松本氏らにより探索された点集合の例では予め点数が固定される。そこで、本研究では、生成行列の列ベクトルを帰納的に選ぶことにより、前の点を維持したまま点を増やせる拡張可能性を有する点集合を探索した。また、参照テーブルを用いたWAFOM計算の高速化を検討した。これらを論文としてまとめ、投稿中である(原瀬-大堀共著、arXiv : 1309. 7828)。 2. WAFOMのみを指標として用いて点集合を探索した場合、滑らかな関数に対しては高次収束する一方、滑らかでない関数に対しては古典的な指標である(t, m, s)-netに基づく準モンテカルロ点集合の方が優れている傾向にあることが分かった。そこで、両者の利点を併せ持つ点集合を探索したい。このために、予め、t-値の小さいdigital (t, m, s)-netを準備しておき、線形スクランブルを用いて点集合をシャッフルすることにより、t-値もWAFOMも小さい点集合を探索する実験を行った。その結果、滑らかな関数に対しては高次収束し、滑らかでない関数に対しても頑健な点集合が得られた。この結果は平成26年4月の国際会議MCQMC2014にて発表予定であり、現在、論文執筆中である。
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