n-6脂肪酸摂取過多かつn-3脂肪酸摂取欠乏という栄養状態が大脳新皮質形成および脳機能に及ぼす影響を解析するため、コントロール飼料またはn-6脂肪酸過多/n-3脂肪酸欠乏飼料(n-6/n-3飼料)を妊娠C57/BL6マウスに投与した。 胎生14日目において大脳皮質原基から神経幹細胞を培養し、アストロサイトへの分化能を解析したところ、n-6/n-3飼料投与群においてアストロサイトへの分化が亢進していた。さらに生体内でのアストロサイト産生を評価するため、生後10日目においてアストロサイトの数を免疫染色法および定量PCR法により評価したところ、飼料間に差が見られなかった。続いて生後1日目においてアストロサイトの増殖能を解析したところ、ここでも飼料間に差が見られなかった。これにより、胎生期に亢進している神経幹細胞のアストロサイト分化は、生後のアストロサイトの増殖能に差がないため、最終的なアストロサイトの数に変化をもらたらさないことが分かった。 続いて昨年度に同定したエポキシドが神経幹細胞の分化能に及ぼす影響を解析した。エポキシエイコサトリエン酸(EET)およびエポキシドコサペンタエン酸(EpDPE)をそれぞれ培養した神経幹細胞に添加したところ、EETはアストロサイト分化を促進し、EpDPEはニューロン分化を促進した。これにより、EETとEpDPEの量のバランスによって神経幹細胞の分化運命が制御され、最終的に大脳新皮質形成異常を引き起こしたことが示唆された。 最後に昨年度に見いだした組織学的異常が脳機能に及ぼす影響を解析するため、生後10日以降を標準飼料にて飼育した成体仔マウスにおいて不安様行動の解析を行なった。するとn-6/n-3飼料投与群において不安様行動の増加が見られた。これにより、n-6/n-3飼料投与群では胎生期において将来の不安の亢進が決定されていることが分かった。
|