研究課題/領域番号 |
12J08044
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山嵜 博未 東北大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | EVI1 / 染色体転座 / トランスジェニックマウス / 白血病 / エンハンサー |
研究概要 |
急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群の約3%の症例に、転写因子EVI1の異常活性化を伴う3q21q26症候群がある。3q21q26症候群とは、3番染色体長腕21領域(3q21)とEVI1が位置する3q26を切断点とする転座あるいは逆位を伴う病態であり、EVI1の発現レベルの上昇は病態との関連性が示されている。 3q21側の切断点近傍に、EVI1遺伝子に対するエンハンサーが存在することが推測されるが、エンハンサー領域や、結合する転写因子は分かっていない。本研究では、大腸菌人工染色体(BAC)を用いた3q21q26転座再現マウスを作製し、EVI1遺伝子の転写活性化機構を明らかにすることを目的とし研究を行った。 本年度においては、3q21と3q26を含む2つのBACを連結することによって作製した転座再現BACをマウスゲノムに挿入した3q21q26TGマウスの解析を行った。また、EVI1のみを含む3q26TGマウスも同様に作製することにより、3q21側にエンハンサーが含まれるかの検証を行った。その結果、3q21q26TGマウスは6ヶ月頃より白血病を発症した一方で、3q26マウスは発症しなかった。白血病発症前の12週齢の個体を解析したところ、3q21q26マウスの造血幹/前駆細胞にEVI1の高発現がみられた。また、造血幹/前駆細胞を含むLSK画分の中に、CD34マーカーの発現が高い異常画分(CD34^<high>)が出現した。これらの結果より、3q21のBACに含まれる約60kbにエンハンサーが存在し、EVI1を活性化することにより造血異常を引き起こし、白血病を発症することが明らかになった。また同マウスは3q21q26症候群のモデルマウスとなり、新たな治療法を開発する上での有用なツールとなることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回作製した3q21q26転座再現BACTGマウスは、期待通りにEVI1の高発現による白血病発症が認められたことから、エンハンサーを同定する上での非常に有用なツールとなると考えらえるため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、エンハンサーの候補領域として考えているGATA2遺伝子のエンハンサーを欠失したBACTGマウスの解析を行うことにより、同領域がエンハンサーとしてはたらくかの検証を行う。
|