平成24年度は、E.フッサールの現象学のもつ形而上学的含意を意味概念という観点から吟味-確定するという本研究課題の目標を達成するために、研究実施計画に基づき、彼の議論の基礎を成す彼の意味概念を充実化条件として解釈することの正当化およびそのような解釈のもつ意義の明確化に努めた。 詳しくは、平成24年度の研究成果は大きく次の三つに分けられる。 第一に、「『論理学研究』の志向性理論における「意味」と「充実化」」(『フッサール研究』第10号)において『論理学研究』におけるフッサールの意味概念を充実化条件として解釈できることを文献的に裏付けるとともに、このような解釈によって『論理学研究』におけるフッサールのプロジェクトに対して指摘されていた懸念を払拭できることを示した。 第二に、フレーゲ研究者として知られる分析哲学者M.ダメットのフッサールへの批判を精査し、フッサールの意味概念が充実化概念として解釈できることを踏まえるならばダメットの批判に答えることができるということを、日本現象学会において口頭で発表した。 第三に、「『論理学研究』における知覚論の二つの解釈」(『論集』第31号)において、現代知覚論における議論を参照することで、フッサールの充実化概念を理解する上で重要だと思われる彼の知覚概念に対して指摘されうる懸念を払拭した。この成果の一部は、大韓民国・ソウル国立大学における第七回BESETO国際会議において英語による口頭発表の形で、海外の研究者に対しても発信された。 第一、第二の成果は、フッサールの意味概念を充実化条件として解釈することの正当性を確認するとともに、その解釈から引き出しうる意義を明確化するものであり、第三の成果はその解釈で用いられる充実化という概念それ自体に対する一定の懸念を払拭するものである。
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