平成25年度は、E. フッサールの現象学が意識と世界の問題に対してもつ意義を、彼の意味概念とその形而上学的含意を明確化することで吟味・確定するという本研究課題の目標を達成するために、研究実施計画に基づき次の二つの作業を遂行した。詳しくは、本年度の研究成果は大きく以下の二つに分けられる。 (1)平成24年度に明確化・正当化した、フッサールの意味概念を充実化条件として解釈するという立場の更なる含意を引き出すため、「『論理学研究』と意味の神話」(『論集』第32号)において、彼の意味概念の一見特異に見える特徴付けの持つ意味を明らかにした。 (2)平成24年度にその意義を明確化した、フッサール初期の主著『論理学研究』における彼の知覚論を、現代の知覚論において「選言説」と呼ばれる立場として解釈するという立場を更に具体化するため、平成25年度は、『論理学研究』以降の彼の知覚論を研究し、彼の立場を具体的にどのような選言説として解釈すべきなのかを示した。これは、平成26年度に実施予定である彼の意味概念の形而上学的含意の明確化の作業につながるものであり、この成果の一部は、デンマーク・コペンハーゲン大学における「現象学と心の哲学に関するコペンハーゲン・サマースクール」において、英語による口頭発表の形で、海外の研究者に対して発信された。 第一の成果は、フッサールの意味概念を充実化条件として解釈することの意義の明確化を前進させたということであり、第二の成果は、彼の知覚論の内実の具体化を前進させることで、当の解釈の要である充実化概念の内実を明確化したということである。
|