研究課題/領域番号 |
12J08068
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
三牧 聖子 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | アジア太平洋 / 地域協力 / 国際関係論 / トランスナショナリズム / 安全保障 |
研究概要 |
7月にオーストラリア国立大学で開催されたJapanese Studies Association of Australiaにパネルを設置し、IPRで発展させられた安全保障論の特徴について報告を行った。その際特に、今日の言葉で言う「人間の安全保障」の萌芽的な議論が展開されていたことに注目した。植民地宗主国から従属地域まで幅広くメンバーとして包含していたIPRでは、主権国家体制を前提とする伝統的な国家安全保障論は、アジア太平洋地域の現状に即していないことが早くから認識され、人の移動や移民排斥といったトランスナショナルなアジェンダ、異なる文化・宗教間の相互理解といったアイディアによる平和構築など、多様なアプローチが模索された。学会終了後は、海外ジャーナルに投稿するための準備を進めてきた。具体的には、IPRのIR研究が、同時期の英米圏のそれと比較してどのような特徴を持っていたのかを概念化する作業を進めた。昨今、非西洋世界におけるIR研究およびIR理論についての関心が高まり、ISAなどでも関連パネルが常置されるようになっている。こうした動向に理論的にも貢献できるペーパーを完成させられるよう、執筆を進めている。9月からは米国ハーバード大学Weatherhead Center for International AffairsにProgram on US-Japan Relationsのフェロー(無給)として所属し、研究を進めてきた。その成果をリサーチペーパー"Non-Governmental Organizations and Origins of Asia-Pacific Regionalism―The Institute of Pacific Relations (IPR : 1925-1961)"にまとめ、同プログラムのディレクターProf. Susan PharrやProf. Shinju Fujihira、アソシエイト、Ph. Dの学生たちと広く意見交換を行ってきた。同ペーパーも、数回にわたる研究報告会の中で得られたフィードバックを反映した上で、海外ジャーナルに投稿したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
米国に拠点を移したことにより、資料面でのアクセス(Eジャーナル、コロンビア大学に所蔵されている一次資料、およびハーバード・ロースクールに主に所収されている関連資料など)が格段によくなったとともに、英語で研究成果のアウトプットを行い、フィードバックを得る多くの機会に恵まれ、今後、海外ジャーナルに挑戦する土台をつくりあげることができた。またアメリカはもちろん、ハーバード大学に滞在している世界中の関心を共有する学者との出会いにより、IPRという戦間期アジア太平洋地域に生まれた、地域協力と研究機関の歴史上の意義を、より広い文脈から考える機会にも恵まれた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たるため、研究成果の公表に力点を置いて研究を進めていきたいと考えている。ISAやAASなどのアメリカの学会とともに、11月にヨーロッパで開催される国際会議(ソルボンヌ大学ロバート・フランク教授主催)への出席について話を調整中である。海外の様々な場所で研究報告を行うことにより、IPRを広く国際関係史および国際関係論の理論史に位置づけられる視野を獲得できると考えている。最終的にはこれらの学会報告で得たフィードバックを反映したものを、海外ジャーナルに投稿することを目指す。
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