研究課題/領域番号 |
12J08073
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
久禮 旦雄 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 法学 / 日本史 / 法制史 / 宗教史 |
研究概要 |
(1)神祇令と神紙官、古代祭祀について 本年度も前年度に引き続き、古代王権とその支配の正当性を保証する祭祀に関する規定である神祇令、その執行機関である神祇官の成立について研究を行った。 2013年度大阪歴史学会大会において古代史部会報告として「神祇令・神祇官の成立―古代王権と祭祀の論理―」を発表し、論文化したものを『ヒストリア』241号に掲載した。 日本古代国家はその支配の正当性を、神祇祭祀との関係の中で構築していたことは、既に指摘されているところである。しかし神祇令祭祀を規定した神祇令と祭祀の執行を担った神祇官の職掌を具体的に検酎するならば、それは意外に脆弱な体系であることを露呈する。また神祇官の地位も律令官僚制の中においては意外なほど低い位置づけしか与えられていない。このような求められる役割と与えられる地位のずれを、神祇令と神祇官の成立過程をたどることによって考えた。結論としては神祇令の祭祀はその内容よりも、安定的に行われることで、結果的に秩序の安定を保証することが重要なのであり、その執行機関としての神祇官は、長官の地位に、他の官司と違い王族が就かず、伴造氏族である中臣氏がほぼ独占することで、特定の王族を優先的に保証することはなくなるのである。そのため神祇官の長官である神祇伯の地位は、他の長官に比べて低く規定されることとなったと述べた。 また『日本怪異妖怪大事典』では「御霊」の項目を執筆し、従来一般的な霊魂観と結びつけられ、民俗学的な説明を加えられていた「御霊」について、近年の研究成果を踏まえながら、平安時代初期の政治史の中から生み出された思想であることを指摘した。 (2)古代王権について 代替わりの儀礼と深い閥係のある年号・改元について『日本年号史大事典』において大化から文保までの149項目の項目を執筆し、その決定過程について史料に基づき説明を行なった。また、同書のコラムでは日本の「私年号」や渤海など中国周辺諸国の年号などについて述べ、年号制度の毛つ意味と位置づけについて論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の研究目的は律令法の外部に流通する祭祀と神祇令内部の祭祀とを比較検討し、また相互の関係を分析することで、古代社会内部における神祇令の位置づけを明らかにするものであり、それによって、法制史的視点と社会史的視点に基づく、神祇令の意義を明らかにし、古代国家の支配の正当性を構築するための理念と実態との関係を分析することを目指すものであった。今年度は前年度に行った研究報告をもとに、学会の大会報告と論文の活字化を行うことができた。『日本年号史大事典』の執筆参加とともに、今後の研究につながる大きな枠組みを提示することができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では神祇令・神祇官の成立過程について論じることができた。既に行っている延喜大神宮式の成立についての論文とあわせ、律令格式のうち、令と式について神祇祭祀との関係を考察を行っているので、この内容を踏まえ、『類聚三代格』に収められる官符や律における神祇祭祀の位置づけについて研究を進め、古代法制と神祇祭祀の関係について明らかにしていきたいと考えている。
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