研究課題/領域番号 |
12J08076
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中田 健太郎 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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キーワード | シュルレアリスム / アヴァンギャルド / オートマティスム / アンドレ・ブルトン / 現代文学 |
研究概要 |
平成24年度には、シュルレアリスムとアヴァンギャルドの方法論の双方について、具体的な分析をすすめることができた。とりわけ、昨年度以前に提出を済ませていたものではあるが、シュルレアリスムにおけるオートマティスムの概念をめぐる総論「理論の見る夢オートマティスムの歴史」の校正作業をすすめ、岩波書店の『思想』誌(平成24年10月号)に発表した。この論文は、オートマティスムという語彙について歴史的に検討することによって、シュルレアリスムの方法論のもつ思想的意義をあきらかにしたものである。また、このオートマティスム研究の成果を、現代文化の分析に適応することも試みた。「怖がったのはだれの心叫びのオートマティスムについて」(『ユリイカ』、2013年2月号)は、その成果である。 いっぽう、アヴァンギャルドの方法論については、とりわけ絵画論の面で具体的な成果があった。横尾忠則をめぐる論考「絵の意味を問うのはなにのためか」(『ユリイカ』、2012年11月号)では、アヴァンギャルドにおけるコラージュの方法論についての考察を発表することができた。また、「多島海のタブロー絵画的マンガ論のために」(『ユリイカ』、2013年3月臨時増刊号)と題した論文は、前衛美術をめぐる言説と海外のマンガ批評の言説を結びあわせることによって、現代美学にもあらたな視点をひらこうとした試みである。 さらに、アヴァンギャルドとシュルレアリスムの双方の芸術実践にかかわった、エジプトのジョルジュ・エナンという作家についても、昨年度以来の研究をつづけた。この成果は、水声社より刊行中の「シュルレアリスムの25時」シリーズの一巻として、近刊の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シュルレアリスムとアヴァンギャルドの双方の方法論について比較検討することが、本研究の主眼であった。現段階で、シュルレアリスムの主要な方法概念であるオートマティスムについての分析と評価をほぼ終えつつあり、比較検討のための準備は、おおむね順調に進展していると言っていい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、アヴァンギャルドの方法論についての具体的分析を、さらにすすめてゆきたい。とりわけ、アヴァンギャルド文学における草稿資料を調査し、それらにあらわれる記述主体の位置について、検討をおこなう予定である。 また、本研究を総括するために、シュルレアリスムとアヴァンギャルドの方法概念の比較検討についても、平成25年度から着手したい。
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