研究課題/領域番号 |
12J08076
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中田 健太郎 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員PD
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キーワード | シュルレアリスム / オートマティスム / アヴァンギャルド / 現代文学 / 美学 |
研究概要 |
平成25年度には、エジプトにおけるアヴァンギャルドとシェルレアリスムの主導者の一人である、ジョルジュ・エナンの詩作をめぐる調査・分析を継続した。その成果は、水声社の「シュルレアリスムの25時」シリーズの一巻である、『ジョルジュ・エナン 追放者の取り分』にまとめて出版した。エナンの詩作にたいする包括的な分析は、シュルレアリスムのテクストとアヴァンギャルドの言語実験を並列的に論じることによってシュルレアリスムの言語的条件を明らかにしようとする本研究課題を、具体的に進展させる意義があった。また、日本においてはほとんど先行研究の存在していなかったエジプト・シュルレアリスムにたいする調査をすすめるなかで、シュルレアリスムの国際性をめぐる言説が、各地域のシュルレアリスム運動とときには対立しながら成りたってきたことが、あらためて理解された。その国際性と地域性の関係については、平成25年度のフランス語フランス文学会関東支部大会において発表を行った。 シュルレアリスムとアヴァンギャルドの詩作上の方法論についてはさらに「現代詩にとってシュルレアリスムの課題とはなにか」と題する短期連載を『現代詩手帖』誌において行い、瀧口修造やイヴ・ボヌフォワなどの詩作について具体的な検酎を行った。また、シュルレアリスム美学の問題をマンガと対比させて検討する研究を深め、その成果は『ユリイカ』誌上の論考や、早稲田大学での公開ワークショップ「マンガ的視覚体験をめぐって」での口頭発表において公にした. このような調査をとおして、シュルレアリスムとアヴァンギャルドの方法論にたいする具体的な分析を深め、両者を比較して論じるための準備をすすめることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シュルレアリスムの言語的条件について再考するという目的に沿って、現在までにシュルレアリスムとアヴァンギャルドの方法論について具体的な検討を積みかさねることができた。計画どおりには分析しえなかった資料もあるが、エジプト・シュルレアリスムについての調査など予定以上に進展した分野もあり、計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在までに調査の及ばなかった資料にたいする検討をすすめ、アヴァンギャルドの言語実験にたいする分析を深め、そこにあらわれる記述主体の位置について、あらためてシュルレアリスムと対比させながら研究を行う予定である。また、本研究を総括するため、具体的な分析結果をまとめた上で、シュルレアリスムの言語的条件を主題とした論文をまとめたい。
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