研究の最終年度となる平成26年度には、シュルレアリスムの方法論と対比させるかたちで、さまざまなアヴァンギャルドの実践をめぐる分析をすすめた。とりわけ、昨年度からひきつづいて、フランスのポップ・アートの一潮流として知られるフィギュラシオン・ナラティヴ運動についての調査と検討を行った。シュルレアリスム以降の美術について、フィギュラシオン・ナラティヴなどを介して、広範な視覚文化の問題とともに再考する昨年度以来の研究は、論文「マンガ表現と絵画の境界をどう考えるか フィギュールという接点」(鈴木雅雄編『マンガを「見る」という体験 フレーム、キャラクター、モダン・アート』所収)にまとめられた。また、フィギュラシオン・ナラティヴをめぐるさらなる実証的調査の成果は、表象文化論学会における口頭発表「フィギュラシオン・ナラティヴはシュルレアリスムとどのように接しているのか」によって公にした。 また、今年度はさらに、さまざまなアヴァンギャルドの実践と比較するなかであきらかになってきた、シュルレアリスムの方法論(とりわけオートマティスム)における主体性の特質についても考察を深めた。その成果は、平成27年3月に東京大学に提出された博士論文「アンドレ・ブルトンにおけるオートマティスムの概念とその変遷」にも部分的に反映されている。また、シンポジウム「声と文学」(第二回)において、「オートマティスムはだれのもの? ブルトン、電子音声現象、初音ミク」という標題で行った発表も、この研究成果の一部をなしている。
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