研究課題/領域番号 |
12J08100
|
研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
向井 理紗 徳島文理大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | HTLV-1 / ウイルス感染 / 核外輸送 / HBZ |
研究概要 |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、成人T細胞白血病(ATL)、HTLV-1関運脊髄症(HAM/TSP)の原因ウイルスである。これまでに、HTLV-1プロウイルスのマイナス鎖にコードされる因子としてHTLV-1bZIP factor (HBZ)が同定されている。HBZは他のHTLV-1由来の因子と異なり、ATL患者において例外なく発現が認められており、さらにHAM/TSPの重症患者ではHBZの発現量が顕著に増加していることが報告されており、HBZはHTLV-1に関連した疾患の発症に何らかの影響を与えていると示唆されているが、その細胞内での機能は未だ不明な点が多い。平成25年度は、我々のグループでHBZが宿主細胞の核内にのみならず、細胞質においても機能制御を果たすということを初めて報告した。さらに、以前酵母ツーハイブリッドスクリーニングを用いて同定していた細胞質因子cullin1 (CUL1)とHBZとの関係性に着目して研究を行なった。CUL1はE3ユビキチンリガーゼであるSCF複合体を構成する因子で、HBZは動物細胞内においてCUL1と相互作用することを見いだした。さらに、CUL1はユビキチン様タンパク質であるNEDD8によって活性化されることが知られている。HBZを過剰発現させた場合、CUL1のNEDD化が上昇することが明らかになった。しかし、興味深いことに、SCF複合体との結合によって分解される因子はCUL1が活性化されるにも関わらずその分解が抑制された。また、この現象はHTLV-1感染細胞および、HTLV-1非感染T細胞にレンチウイルスベクターを用いて恒常的にHBZを発現させた細胞株においても同様の結果が得られた。今後は、この矛盾点を解決すべく、SCF複合休に与える影響などを解析していきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度明らかにしたHBZの核外輸送における追加データを得ることができた。また、新たな宿主細胞質因子とHBZとの関係性を見いだすことができた。細胞質におけるHBZの役割は未だ我々のグループ以外から報告がないため、非常に重要な知見を与えられるものであると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、SCF複合体の構成にHBZが関与するか検討していく必要がある。また予備的な実験ではあるが、HBZはCUL1だけでなく細胞全体のNEDD化亢進に寄与し、さらにその機能は細胞質に移行したHBZで見られるというデータを得た。これらを踏まえ、さらに細胞質におけるHBZの機能制御について解析していく予定である。
|