研究概要 |
平成24年度は,カルバート構造の耐震性に関して,主に以下に示す3項目について研究を実施した. (1)カルバート構造形式に関する検討: 耐震設計を必要としない従来型設計法の適用が困難と考えられる規模および構造を有するカルバートを想定し,カルバートの構造形式と盛土高さが地震時挙動に与える影響を明らかにすることを目的に,動的遠心模型実験とその数値解析を実施した.その結果,ヒンジ式のアーチカルバートでは,盛土高によらず地震時の曲げモーメント増分は一定であることなど,各構造における基本的な動的挙動を確認した- (2)複数のカルバートに対する検討: 複数のプレキャスト製アーチカルバートを連続的に並べた,連続アーチ盛土と呼ばれる新形式について,アーチカルバート同士の設置間隔をパラメータとして,L1,L2地震動を用いた数値解析を実施した.その結果,アーチカルバート同士の設置間隔によらず,いずれのケースにおいてもL1,L2地震動に対してヒンジ部の機能が損なわれる可能性は低いことを確認した. (3):カルバート縦断方向の耐震性: カルバートを含む盛土では,過去の地震においてはカルバート躯体本体に目立った損傷が発生せず,地震時には崩壊した盛土の復旧を行えばよいとの認識から,カルバート縦断方向の耐震性に関して十分な検討がされてこなかった.そのため坑口付近の地震時挙動などが未解明なまま,設計・施工が行われているのが現状である.そこで,カルバート縦断方向に関して,アーチカルバート盛土を対象にカルバート間の連結様式および坑口付近の挙動に着目した遠心模型実験を実施した.実験より,カルバート同士が連結されている場合には,カルバートに圧縮および引張りが交互に生じるのに対し,分離されている場合では引張力はほとんど発生せず,発生する断面力自体も小さいことなど,基本的な動的挙動について確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,遠心模型実験装置および数値解析手法を用いて研究に取り組んだ.遠心模型実験では,カルバート横断および縦断方向の耐震性に関して実験を実施し;カルバート構造における基本的な動的挙動を確認することができた.また数値解析においては,ヒンジ部のモデル化,既存のRC部材の構成モデルを本研究に適用できるように改良するなどして研究を実施し,一定の成果を挙げた.
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今後の研究の推進方策 |
カルバート構造の耐震性の課題として,盛土材料が挙げられる.一般的に盛土材は現地発生土を利用するが,現地発生土が盛土材に適さない場合はセメント改良を行う.セメント改良土は自立性や剛性が比較的高いため,地震時に盛土とカルバートの間に隙間が生じる可能性がある.これは,カルバートは地盤の変形に追従すると仮定している応答変位法の考え方に反する.そこで,室内試験により改良土の材料特性を把握した後,カルバートと改良土の境界付近に着目した振動台実験および数値解析を実施する. また,平成24年度に得られた成果を含めた取りまとめを行う.
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