研究概要 |
1. 周囲の環境とエネルギーの出入りが生じる量子散逸系における, 多次元量子波束ダイナミクスの近似計算方法を開発した. これは課題の集光デンドリマーのダイナミクスを解析するために必要となる基礎理論と位置づけられる. 多次元量子波束ダイナミクスは, エネルギー散逸のない孤立系に関しては, 実用的な計算手法が徐々に開発されてきているが, 散逸系への拡張はいまだに不十分であり, これを開発することは強く望まれている. そこで本研究においては, これまで孤立系で開発されてきた半古典近似に基づく近似計算を散逸系に拡張した. 本研究の手法では, ブラウン運動を行うガウス関数の重ね合わせとして, 波束全体のダイナミクスを表現することになり, 計算量を抑制するのみならず, ダイナミクスの直感的理解にも適した形式となっており, 今後の応用が期待できる. 成果は学術誌へ投稿する準備中である. 2. 集光デンドリマーの幾何学的形状と集光機能の関連性を明らかにする研究を行った. 集光デンドリマーとは, 小さな分子がいくつも結合し, 樹状の形をなす分子であり, 枝葉で吸収した光のエネルギーを根元に集めるという機能を持つ. このような, 大きなサイズの分子になって初めて生じる機能と, その分子の構造の関連性を理解することは, 今後様々な機能性分子を構築していく上で重要な意義を持つ. 本研究では, 枝分かれの繰り返しというデンドリマー固有の対称性に着目すると, 一見複雑なデンドリマーの運動が, いくつかの単純な運動の重ねあわせに過ぎないことを見出した. また, そのような単純化が可能となる一般的な条件も明らかにした. 一方, この単純化を活用することで, 集光機能が生じる機構を簡単に説明できることを示した. これは上記の, 分子の構造と機能の関連性を明らかにしたひとつの例である. 成果は学術誌へ投稿する準備中である.
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