研究課題/領域番号 |
12J08156
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岸見 太一 早稲田大学, 政治学研究科, 特別研究員DC1
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キーワード | 移民の倫理学 / 規範的研究の方法論 / J・H・カレンズ |
研究概要 |
当該年度においては、政治理論においてどのように外国人政策のような個別の政策に関する規範的評価がなされるべきか、方法論的な検討を行った。その内容は次の二つに大別される。 第一に、外国人政策におけるネーションの自己決定の重要性を主張するD・ミラーが依拠する方法論の批判的な考察を通じて、現実状況に対して具体的かつ実現可能な指針を提示するような、「文脈化」された政治理論の方法論を検討した。この研究は、J・ロールズに代表される英米系の政治理論は、現実の個別政策に対する十分な指針性をもっていないという批判に応答する、代替的な方法論の提示を試みたものである。この研究は、移民の倫理学だけでなく、その他の現実の状況を不可避的に考慮せざるえない個別政策についての規範的研究の方法論として意義をもつだろう。この成果は2014年度に発行される査読誌『政治思想研究』(政治思想学会)に掲載予定である。 第二に、方法論的な議論のうち、とくに移民の倫理学の第一人者であるJ・H・カレンズが2013年の著書『移民の倫理学(The Ethics of Immigration)』において提示した前提変更(shifting presuppositions)アプローチ」と呼ばれる方法論の分析および評価を行った。その結果、前提変更アプローチは、ロールズの現実主義的ユートピアおよびミラーの文脈主義と比較して、いまここの現実の状況に対する批判性の担保と実現可能かつ具体的な行為指針の提示という二つの課題にうまく応答しており、理想と現実の統合の一つの有力な代替的方法を提示していると評価できることを示した。しかしながら他方で、M・ウォルツァーに依拠する彼の議論は、結局は解釈者自身の見解を提示することしかできない懸念があると思われる。この成果は2014年度に発行される『早稲田政治公法研究』(早稲田大学)に掲載予定である。 以上の研究成果によって、外国人政策を政治理論において方法論的にどのように扱うべきかの一端が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究によって、研究目的を達成するうえでもっとも基礎的な検討課題である方法論に関して一定の成果をえた。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度において明らかにした方法論的検討の成果をもとに、難民政策や非正規滞在者の法的取り扱いのような具体的な諸問題に焦点をあてた研究を推進する。
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