本研究では、研究開始以前に構築したヒトsmall non-coding RNAライブラリーを用いてSELEX法を行い、小分子に結合するmiRNA前駆体を探索する事を目的としている。これまでの研究において、S-アデノシルホモシステイン(SAH)及び葉酸をターゲットとしたセレクションを行い、各々のターゲット分子に結合するRNAを発見した。前年度の研究においてSAHに結合するRNAはヒト培養細胞で発現が確認できなかったため、本年度は葉酸に結合するmiRNA前駆体(pre-miRNA)の解析を行った。 Pre-miRNAと葉酸の結合定数の測定を、BLI (Bio-layer Interferometry)法によって行った。葉酸をBLI測定用のセンサー表面に共有結合によって固定化し、in vitro転写合成したpre-miRNAをアナライトとして用いることで、結合定数を測定した。その結果、結合定数は約3μMとなった。様々な変異体pre-miRNAを転写合成し、それらの葉酸に対する結合定数を同様の手法を用いて測定した。その結果、pre-miRNAのループ部分の配列が葉酸への結合に必須であることが判明した。この配列はpre-miRNAの前駆体であるpri-miRNAにも存在しているため、pre-/pri-miRNAの両方が葉酸に結合すると考えられる。さらにこの葉酸結合配列は他のmiRNA前駆体には存在しないため、本研究で特定したmiRNA前駆体のみが葉酸に結合することが示唆される。 続いてヒト培養細胞を用いた実験を行った。ヒト培養細胞の培地中に葉酸を加え、miRNAの発現変化をTaqman プローブを用いた定量PCR法によって測定した。その結果、葉酸を50μM加えることでmiRNAの発現量が8割程度に低下することが分かった。ヒト培養細胞を用いたより詳細な機能解析を現在行っている。
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