研究概要 |
グルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1 ; GLP-1)は、摂食による管腔内の糖、脂質、アミノ酸などの栄養素の濃度変化に応答して、小腸内分泌L細胞から分泌される。糖、脂質によるGLP-1分泌機構は明らかにされてきたが、アミノ酸によるGLP-1分泌制御機構については、未だ不明な点が多い。現在アミノ酸の中でもグルタミンが最もGLP-1分泌を促進するアミノ酸であることが報告されている(Tolhurst G. et.al., Endocrinology. (2011) 152,405-413)。そこで本申請課題では、グルタミン依存性GLP-1分泌機構の解明を目的とした。 まず、我々はアミノ酸受容体や代謝系の関与の検証を行った。それぞれの経路の阻害剤をグルタミンと同時に投与すると、グルタミン依存的な細胞内カルシウム濃度の上昇率は減少したが、完全には阻害されなかった。この結果はアミノ酸受容体や代謝系を介したものとは別の経路がグルタミン依存性GLP-1分泌に関与していることが示唆された。 グルタミンは細胞内に取り込まれることで代謝されたのちアルギニンに変換され、一酸化窒素合成酵素の働きにより一酸化窒素(NO)が産生される。産生されたNOは可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化し、GTPからサイクリックGMPを産生する。サイクリックGMPはサイクリックヌクレオチド感受性(CNG)チャネルを活性化し、細胞内カルシウム濃度が上昇することでGLP-1が分泌されると考えられる。 まず初めに、GLUTag細胞における一酸化窒素合成酵素(NOS)、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)及びCNGチャネルの発現をRT-PCRにより検証した。その結果、NOS1,3、sGCα2,3,β2、及びCNGα3,β1が発現していることが明らかとなった。また、蛍光イメージングの結果、グルタミン投与により細胞内一酸化窒素濃度及びカルシウム濃度が上昇することが明らかになった。
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