研究概要 |
細胞は栄養飢餓に陥るとオートファジー(自食作用)を誘導し、自分自身を分解・リサイクルすることで飢餓を生き抜いている。出芽酵母では、オートファジーが誘導されるとまずPASと呼ばれる"オートファゴソーム形成の足場"が構築される。PASの形成は細胞内の栄養状態によって厳密に制御されており、細胞が栄養飢餓に陥ると直ちに形成されるが、一方、栄養を添加し、栄養状態が改善すると10分ほどで離散する。しかしながら、どうやってPASの形成が制御されているのか、その分子機構の理解は遅れていた。PASの形成にはAtg1,Atg13,Atg17-Atg29-Atg31複合体が必須であり、これらの因子が栄養飢餓に伴い、Atg1-Atg13,Atg13.Atg17相互作用を上昇させ、Atg1.Atg13-Atg17-Atg29-Atg31複合体を形成することが必須である。私はこのPAS形成に重要なAtg1.Atg13,Atg13.Atg17相互作用に着目し、Atg13のC末端領域のリン酸化はAtg1-Atg13相互作用に、Atg13の中央の領域のリン酸化はAtg13.Atg17相互作用に関与することで、栄養飢餓に応答したPAS形成を制御していることを見出した。これらの成果はこれまで謎であったPAS形成の制御機構に迫るものであり、オートファジーの誘導のメカニズムの理解に資するものと確信している。現在、これらの研究成果について投稿準備中である。また、選択的オートファジーの分子機構についても共同研究を行い、その成果をJBC誌に報告した。
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