研究課題
オートファジーは真核生物が普遍的に備える細胞内分解系である。オートファジーが誘導されると、細胞質成分を取り囲んだオートファゴソームと呼ばれる球状の2重膜構造体が形成され、その外膜がリソソーム/液胞と融合することにより、オートファゴソームの中身は分解される。細胞は栄養飢餓に陥ると、オートファジーを誘導し、自身の細胞質成分を分解・再利用することにより、飢餓時の生存維持に重要な役割をはたしていることが明らかとなっているが、オートファジーを誘導するメカニズムの詳細は不明な点が多い。これまでの解析により、オートファジーの誘導には、オートファジーに必須なタンパク質の集合体、PAS (pre-autophagosomal structure)の構築が必須であることが知られている。出芽酵母では、このPASを構成するタンパク質のうち、Atg13が中心的な役割を果たしている。富栄養条件下では、Atg13は高度にリン酸化されているが、栄養飢餓に応答し、速やかに脱リン酸化すると、Atg1, Atg17との相互作用が強まり、Atg1複合体(Atg1-Atg13-Atg17-Atg29-Atg31複合体)を形成する。Atg1複合体はさらに高次な集合体を形成し、PASを構築するため"足場"として機能する。PASには、膜の供給源のひとつであるAtg9ベシクルやAtg8をはじめとした膜形成に必須なたんぱく質が機能単位毎に決まった順序で局在し、オートファゴソーム形成が進行する。昨年までにPAS形成の分子機構を明らかにするため、私たちは微生物化学研究所の野田主席研究員らとの共同研究により、Atg1複合体形成に必須なAtg1-Atg13相互作用とAtg13-Atg17相互作用の結晶構造解析を行い、得られた構造情報をもとに変異解析を行った。結果、Atg13の相互作用表面に位置するSer残基のリン酸化がAtg1複合体形成の制御に機能することを見出した。本年度は、以上の研究内容をNature structural molecular and biologyに投稿し、受理された(申請者は共筆頭著者である。)。
2: おおむね順調に進展している
論文が受理されたため。
本年度はさらに詳細なドメイン解析を行い、Atg13にはAtg17との結合領域が2つ存在し、一方はAtg1複合体形成、他方はAtg1複合体が高次な集合体を形成するのに必要であることを明らかにした。さらにAtg13はAtg1複合体形成とは異なるドメインを介して、Atg9と結合し、Atg9ベシクルのPAS局在に機能することも見出した。これまでの結果を踏まえると、Atg13はAtg1複合体の形成を制御することでオートファジーの誘導を担うだけでなく、異なるドメインを介しAtg9と結合することで、Atg9ベシクルのPASへのリクルートに機能し、オートファジーの初期過程の進行に必須な役割をはたしていると考えられ、今後は、以上の内容について論文投稿する予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
NATURE STRUCTURAL & MOLECUIAR BIOLOGY
巻: 21(発表確定) ページ: 513-521
10.1038/nsmb.2822