研究概要 |
本研究の目的は, 購買衝動と社会的抑制の脳内バランスが, どのように変化するのかを、Functional magnetic resonance imaging (fMRI)を用いて可視化し, 究明することにある。 申請者の先行研究では, 心理実験の結果, 社会的なリスク(他人に批判されるのではないかという恐れ)が購買行動を抑制する効果を有することが示された。上記の先行研究を踏まえ本計画では, 脳内における社会的抑制の影響力の変化を, 状況操作をすることにより明らかにする。 本年度は、データの論文化を進め, 投稿した結果, "The Neural Bases Underlying Social Risk Perception in Purchase Decisions"がNeuroImage誌(インパクトファクター6.252)に掲載された 解析は、MATLAB上にて起動するSPMソフトウェア(http://www.fil.ion.ucl.ac.uk/spm/)を用いた。結果は, 購買衝動と社会的リスクに相関して働く脳部位を同定した。購買衝動は, 中脳に存在する腹側被蓋野, 社会的リスクは島皮質が重要な役割をはたすことが明らかになった。 更に, 別途脳形態の解析を進めた。個人のどのような脳形態が, 金銭的浪費傾向に関わるか調べた研究を行った。776名の脳形態画像と, 金銭的浪費に関わる心理尺度を取得した。解析は, voxel-based morphometry (VBM)方を用い, 個人の金銭的浪費傾向の心理尺度と局所灰白質体積が相関する脳部位を同定した。結果として, 個人の金銭的浪費傾向の心理尺度が, 尾状核という部位の局所灰白質体積と正相関することが明らかになった。この結果は, 個人の浪費傾向が, 尾状核の脳形態と関連することを示している。
|