研究課題/領域番号 |
12J08308
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
窪田 薫 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 海洋酸性化 / ホウ素同位体 / 炭素循環 / 二酸化炭素 / サンゴ |
研究概要 |
本研究の最終目的は、最終退氷期と呼ばれる古気候学における非常に重要な気候イベントが生じた期間における、赤道太平洋を中心とした古環境を復元することである。目標達成には海洋表層水のpHの間接指標になると考えられているサンゴ骨格中のホウ素同位体を用いる。人間活動によって放出された二酸化炭素の海水への溶け込みが原因で生じるpH低下は海洋酸性化と呼ばれ、現在人類が直面する国際的な環境問題の一つとして注目を集めており、その過去の復元には社会的にも大きな意義がある。高精度のpH復元を達成するためには、まずホウ素同位体-pH関係を野外に生息している現生サンゴおよび海水pHを制御して飼育されたサンゴの両方を用いて厳密に評価する必要がある。さらに最近の研究から、海水pHだけでなく、サンゴ体内のpHの影響も古環境解析を行う上で考慮する必要性が示され、事態は複雑化している。当該年度は研究実施計画に書かれた実験計画のうち、野外で採取された現生サンゴ試料に対する測定を行ったものの、予期せぬ機械トラブルにより、飼育実験の試料までは測定することが適わなかった。さらに野外試料を用いて得られたデータも、再測定を行うことにより、再現性を確認する必要性が生じている。その後飼育実験による試料の分析を予定している。これらの一連のデータが得られることで、ハマサンゴのホウ素同位体を用いたより正確なpH復元を行うことが可能となり、学会および社会における影響力は大きいと思われる。また当初の計画よりもさらに時間分解能を増やし、より厳密な記録を得ることを計画している。当該年度において学会発表は精力的に行い、東京大学大気海洋研究所-ハワイ大学合同シンポジウム、2012年度日本地球化学会年会、アメリカ地球物理学会2012年秋期大会にて成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
機械の不調が主な原因で、満足のゆくデータを得ることが適わなかった。そのため、当初予定した実験計画に遅れが見られている。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度においてなされた実験は、本年度中に再測定を行うことで測定値の確度を確認する必要がある。また研究計画に遅れが見られるため、より効率化を行う必要がある。さらに日々変化し続ける学会の情勢をふまえ、研究計画も日々練り直しながら、世界に誇る成果を達成したいと考えている。
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