研究概要 |
本年度前半は前年度に引き続き, 以前得られたタヒチの化石サンゴのホウ素同位体データを学術誌に投稿するために共著者と議論を重ね, 2013年9月に初投稿に至った(論文1). その後, 複数の科学雑誌への投稿を試みるも論文受理は適わなかった. 2014年3月にNatureの姉妹紙であるオンライン科学雑誌Scientific Reports誌の査読者から好意的なコメントが返され, 3ヶ月以内に返答を作成し, 論文原稿の改訂を行う運びとなった. 現在もその改訂作業を続けており, 近日中に完成する見込みとなっている. 論文1の内容は「2013年度地球惑星科学連合大会」で口頭発表, 「第16回AMSシンポジウム」「11th International Conferenceon Paleoceanography」でポスター発表を行った. これを受け、タヒチのサンゴ試料分析のみならず、小笠原諸島・父島で得られた現生ハマサンゴ骨格のホウ素同位体分析を通じて, 過去120年間の海洋酸性化の復元およびそのサンゴ石灰化への影響の評価を開始した. 論文の査読コメントにも記されていたことであるが、野外で採取された現生サンゴに対するホウ素同位体の報告例は極めて少なく, また所属研究グループはインド・太平洋熱帯域のサンゴ試料を多数有しているため, これまで得られたタヒチの結果のより詳細な検証と、この海域の高精度かつ良質なデータを世界に先立って提供できることが期待される. 2013年11月~2014年3月の間に3度, それぞれ2~3週間ずつ, 海洋研究開発機構・高知コアセンターに滞在し, 表面電離型質量分析器および多重検出器型質量分析器を用いて測定を行った. 分析によって得られた結果は極めて興味深く、これまで報告がないような記録である可能性が高いことが明らかになったため, 今後考察と議論をさらに深め, 2014年度前半には国際学術誌にて公表するべく執筆作業を開始した(論文2). 並行してこれらのデータについては, 「2014年度地球惑星科学連合大会」などで随時報告を行っていく予定である. 生物源炭酸塩の微量・局所分析手法は、ホウ素同位体比や微量金属分析にとともに、本研究テーマと密接な関係を持つ. 本年度後半は研究室に卒論生として配属された2人の学部4年生とともに, レーザー・アブレーション型質量分析装置の測定法について習熟することができた. その際に得られたデータをもとに2編の学術論文を主著1編および共著1編で執筆予定である(論文3・4).
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