超新星残骸は銀河宇宙線の源として最有力天体である。宇宙線の加速過程とそれに必要な磁場についてはまだわかっていない。これまでの研究は、完全電離プラズマを仮定したが、超新星残骸からはHαも観測されており、その周りが完全電離でない事がわかっている。 初年度では部分電離プラズマ中の無衝突衝撃波とそこでの粒子加速や磁場増幅過程を調べるため、イオン化を取り入れたプラズマ粒子シミュレーションコードの開発を行い、完成に至った。 25年度は開発したシミュレーションコードを用いて計算を行った。以下の事を明らかにし、論文にした。 1 衝撃波面に流入する上流の中性粒子のフラックスの数%が、 衝撃波下流から上流へしみ出す。 2 しみ出した中性粒子は、衝撃波上流でイオン化しピックアップイオンとなり、 選択的に衝撃波を往復することで加速される。 3 しみ出した中性粒子の影響で、衝撃波遷移層の厚みがジャイロ半径のスケールから イオン化の空間スケールと大きくなる。 4 しみ出した中性粒子の影響で、衝撃波上流では音波が不安定になる。 最後の結果の4は線形解析を行い、シミュレーションのみではなく、実際の超新星残骸でも生じる可能性があることを示し、論文にした。
|