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2013 年度 実績報告書

自己集合性錯体を利用した金属ナノワイヤーの構築と単分子伝導度測定

研究課題

研究課題/領域番号 12J08348
研究機関東京大学

研究代表者

大須賀 孝史  東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)

キーワード自己集合 / クラスター / 単分子伝導度 / 単結晶X線構造解析
研究概要

電子デバイスが高密度化し、材料の微細加工は数十nmスケールに達している。将来行われる数nmサイズの材料構築は、原子の大きさに相当するため、原子や分子を集積するボトムアップ型の戦略が有効である。我々は、箱型のかご状錯体の内部で平面状Au三核錯体を積層することで、Au数個(2-20個)からなる[3xn]型Auクラスターの構築に成功している(J. Am. Chem. Soc. 2010,132,15553)。このAuクラスターは全体をかご状錯体の有機配位子で覆われているため、外部との相互作用が十分はたらかないと考えられる。そこで本年度は分子設計を改良し、Auイオンが分子表面に露出したナノワイヤーの構築を行った。まず、錯体分子集積の足場とするために、Au三核錯体を底面にもつ水溶性トレー型分子を合成した。水中で積層構造を得るためには疎水効果が最も重要であるという知見から、浅い疎水ポケットをもつトレー構造さえあれば、平面分子の集積が可能であると考えた。三核錯体をピリジル基で修飾し、Pd (II)イオンを配位させることで、周囲がせり上がった構造を得た。この凹みには、平面状Au三核錯体がゲストとして認識された。全体として、Au三核錯体の積層数(n)は、溶媒条件やAg (I)イオンの添加に応じて任意の数(n=2-4)で調節できた。
一方、Auクラスター自体も高い伝導特性が期待されるため、STMを用いた測定を行った。Auクラスターは、金属数や配列に分布が無いため、電気伝導度特性に代表される基礎的な物性の解明に最適である。伝導度は他の導電分子と比較して極めて大きく、減衰率が小さいことから、Auワイヤーがnmサイズにおいても長距離電子輸送に適していることを示している(Angew. Chem. Int. Ed. 2013,52,6202)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、金属錯体を集積することによる金属ナノワイヤーの作成と、伝導度特性の解明である。本年度は錯体集積の足場となるトレー分子を設計し、これを用いて金属ナノワイヤーの合成を達成した。これと平行し、既に合成していたAuクラスターの伝導度測定が可能であることを確認し、文献報告を行った。測定に得た多くの知見は、金属ナノワイヤーを測定する際にも活用でき、研究の進展は順調である。

今後の研究の推進方策

昨年、合成に成功したAu6、Au9、Au12AgIナノワイヤーの単分子伝導度を測定し、長さに応じた特性を明らかにする。測定法は、昨年Auクラスターの伝導度測定に用いた方法を用いる。ナノクラスターはかご状の有機分子内部に包接、安定化されていた。一方、ナノワイヤーでは両端のAuイオンが分子表面に露出しているため、クラスターと比較して高い伝導度を示すことが期待される。さらに今回構築したワイヤーは、分子間において金属相互作用が期待される。これによりナノワイヤー同士を直列に配列することで、ワイヤーの飛躍的な伸長を行う。ワイヤーの会合度は溶液濃度を調整することによって調整する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Highly Conductive [3×n] Gold-Ion Clusters Enclosed within Self-Assembled Cages2013

    • 著者名/発表者名
      Kiguchi, M ; Inatomi, J ; Takahashi, Y ; Tanaka, R ; Osuga, T ; Murase, T ; Fujita, M ; Tada, T ; Watanabe S.
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie International Edition

      巻: 52 ページ: 6202-6205

    • DOI

      10.1002/anie.201301665

    • 査読あり
  • [学会発表] トレー型Au (I)三核錯体を利用した金属錯体の有限集積2014

    • 著者名/発表者名
      大須賀孝史、村瀬隆史、藤田誠
    • 学会等名
      日本化学会第94春季年会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知)
    • 年月日
      2014-03-30
  • [学会発表] Au (I)三核錯体を底面に持つトレー型分子の合成と分子認識2013

    • 著者名/発表者名
      大須賀孝史、村瀬隆史、藤田誠
    • 学会等名
      第24回基礎有機化学討論会
    • 発表場所
      学習院大学(東京)
    • 年月日
      2013-09-05
  • [学会発表] Highly conductive [3×n] Gold Ion Arrays Templated by Self-Assembled Cages2013

    • 著者名/発表者名
      Osuga, T. ; Tanaka, R. ; Murase, T. ; Inatomi, J. ; Takahashi, Y. ; Kiguchi, M. ; Fujita, M.
    • 学会等名
      Challenges in Organic Materials & Supramolecular Chemistry (ISACSIO)
    • 発表場所
      Kyoto, Japan
    • 年月日
      2013-06-20
  • [学会発表] Highly conductive [3×n] Gold Ion Clusters Templated by Coordination Cages2013

    • 著者名/発表者名
      Osuga, T. ; Tanaka, R. ; Murase, T. ; Inatomi, J. ; Takahashi, Y. ; Kiguchi, M. ; Fujita, M.
    • 学会等名
      5^<th> Gratama Workshop
    • 発表場所
      Tokyo, Japan
    • 年月日
      2013-05-30

URL: 

公開日: 2015-07-15  

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