研究課題
LGRs(leucine-rich repeat containing G-protein coupled receptors)は膜外ドメインにロインシンリッチリピートを持つ受容体ファミリーである。LGR4はR-spondinと結合することでWntβ-cateninシグナルを制御することが明らかとなっている。乳腺は哺乳類に特徴的なミルクを生産する器官であり、樹枝状の管腔構造を形成する上皮性組織である6マウスにおいては胎児期に発生した乳腺原基から、第二次性徴期のホルモン刺激を受け樹枝状の管腔組織が枝分かれと伸長を繰り返し発達していく。この過程で乳腺細胞は上皮内腔細胞と筋上皮細胞の2種類の細胞へと分化し二重の管構造をとる。更に妊娠時にはホルモン分泌の変化を受け、ミルクを生産するalveolarと呼ばれる組織が分化する。本研究ではKeratin5-CreTgマウスを用いたLg4 conditiGnal KOマウス(Lgr4 cKOマウス)を用いて乳腺組織の発生・分化におけるLGR4の機能を解析した。Lgr4cKOマウスは第二次成長期にあたる4週齢から8週齢において乳腺管構造の伸長遅延およびブランチング形成の低下を示した。また妊娠時においてalveolarの発達不全を呈し、授乳能が失われていた。これらの結果からLgr4は生後の乳腺発達に関わる機能を有することが明らかとなった。またFACSを用いた乳腺細胞の分画解析により、Lgr4 cKOマウスでは細胞画分の比率に変化が見られた。このことはLGR4が乳腺細胞の分化に関わることを示唆する。
1: 当初の計画以上に進展している
申請書に記載した1年目の研究計画のうち、乳腺組織におけるLGR4の発現局在解析は計画通りに進行し、十分なデータを得ることができた。加えて、二年目の研究計画に予定していた解析についても既に先行して行っている。
これまでの結果からLGR4は細胞非自立的なメカニズムによって乳腺上皮細胞の分化や維持を制御している可能性が示唆されている。今後の解析ではフローサイトメーター分離したLGR4発現細胞やLGR4欠損細胞の遺伝子発現パターンをマイクロアレイによって解析することで、LGR4による乳腺上皮細胞の制御メカニズムの詳細を明らかにする。
すべて 2012
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 76 ページ: 888-91
10.1271/bbb.110834