研究課題/領域番号 |
12J08386
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小西 真理子 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 共依存 / 国際情報交換 / カナダ:アメリカ / 倫理学 / 嗜癖 |
研究概要 |
報告者は、平成24年度、論文を2本、国際カンファレンス・シンポジウムの受理を2つ受けている。 1、報告者は平成24年の8月より、研究指導の委託の形をとり、カナダのマギル大学哲学科でGraduate Research Traineeとして研究を遂行している。 カナダでの研究の成果は、以下の研究活動に反映されている。 (1)大震災におけるアルコール依存症に関する実例を検証することで、これまで否定的に語られてきた「イネイブリング」という概念が必ずしも否定的なものではなく、肯定的な側面を持つということを論じ、"What is Enabling:A Study of Support Groups of the Tohoku Earthquake"と題して、立命館大学国際言語文化研究紀要『言語文化研究』第24巻4号に英語論文として投稿した(平成25年3月刊行)。 (2)平成25年1月にニューヨーク大学にて、ケアの倫理の創始者であるCarol Gilliganにインタビュー調査を行った。また、Gilliganの論文"Moral Orientation and Moral Development"(in Justice and Care,1987)の翻訳権をいただいた。この翻訳は今年度3月に刊行予定の立命館大学生存学研究センター学術雑誌『生存学』第七号に投稿予定である。 (3)オタワ大学にて行われる国際シンポジウムLes ethiques du care et du souciにおける発表が受理された(発表は25年4月に行う)。 (4)シンガポールで行われるアジア太平洋国際カンファレンスThe 2nd Asia Pacific Behavioural and Addiction Medicine Conferenceにおける発表が受理された(発表は25年5月に行う)。 2、アルコール依存症者の自助団体アルコホリック・アノニマスにおける自己の語りに注目することで、その団体に属している人々の自己のあり方が依存症者のあり方と同様の構造を持つことを論じ、「自己紹介に嗜癖する--ギデンズ、フーコーを手掛かりに」と題し、日本嗜癖行動学会誌『アディクションと家族』第29巻2号に投稿した(平成25年5月末刊行予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種嗜癖のメカニズムが、嗜癖回復者の行為のメカニズムと同様の形態を取ることを、哲学、社会学、心理学それぞれの視点から明らかにした(論文1本、発表2つ)。これらは嗜癖者のみを否定的なものとしてみなす言説に異議を唱えるための基礎理論となる。平成25年度は、精神分析の研究を主に進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、第一に精神分析の研究を進めていく。第一に、Freudの精神分析からアメリカの自我心理学において、「共(co)」という契機が過去の症例記述でどのように扱われてきたか、あるいは見逃されてきたのかを「子供のトラウマ」問題を切り口にして点検する。第二に、上記の精神分析における「共」依存的なトラウマ問題を考慮した上で、共依存を倫理的に再評価する。共依存はDVやアルコール依存症、子供のトラウマの原因となる否定的評価がされるべき概念である。ここには、人間の多様性を無視した倫理の暴力性あり、共依存に潜む肯定的側面を見落とす原因になってしまう。そこで共依存の肯定的側面に光を当てる。
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