研究課題/領域番号 |
12J08386
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小西 真理子 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 共依存 / カナダ / ケアの倫理 / 精神分析 / 嗜癖 / キャロル・ギリガン / フェミニズム / 臨床心理 |
研究概要 |
報告者は、平成25年度、論文を1本、翻訳論文を1本、解題を1本執筆した。口頭発表としては、国際会議を3本、国内学会を1本行っている。3月には博士論文を提出した。 (1) 2013年4月は、カナダの国際シンポジウム(Les éthiques du care et du souci : quels apports pourles sciences sociales?)にて、欧米文化と日本文化を比較検討についての発表をした。 (2) 2012年度に引き続き、嗜癖のメカニズムと嗜癖回復者のあり方を比較検証した。この研究成果は、第一に、2013年5月に刊行された日本嗜癖行動学会誌『アディクションと家族』(vol. 29-2)において、論文として掲載された。第二に、2013年5月にシンガポールで開催された国際会議(The 2nd Asia Pacific Behavioural and Addiction Medicine Conference ; Transfoming Journeys)にて発表した。 (3) 2013年8月と9月は、新Freud派であり「共」依存的視点を精神分析の流れの中で取り入れているFrommの共棲(symbiosis)の分析を用いて、これまでの共依存研究に欠如する傾向にあった性的関係性の視点を取り入れて共依存を分析した。この研究成果は、2013年9月にイギリスで開催された国際会議(8th Global Conference : The Erotic : Exploring Critical Issues, Inter-Disciplinary. Net)にて発表した。 (4) 2013年10月は、共依存に対するフェミニズム批判について考察した上で、共依存概念に存在意義があることを明らかにした。この研究成果は、11月に開催された第66回関西倫理学会大会にて発表した。 (5) 2013年度初旬より取り組んでいたキャロル・ギリガンの論文「道徳の方向性と道徳的な発達」の翻訳と、解題「キャロル・ギリガン」の執筆を11月に完成させた。翻訳と解題は、2014年3月に刊行された『生存学』vol. 7(生活書院)にて掲載された。 (6) 2013年12月以降は、これまでの研究成果などを博士論文「共依存の倫理――精神分析と臨床心理を越えて」としてまとめ、2014年3月に提出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、フェミニズム理論からみた「依存」の研究、精神分析と共依存の研究を行い、それぞれ順調に研究を進めることができた。また、共依存言説に潜む倫理観を暴き出すことには成功した。しかし、この研究の先に見出されるはずである共依存の肯定性の論証を十分に行うことができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
共依存研究を受け継ぐ形で、今後は、共依存に限らない「関係性の病」をテーマとして研究を進めていく。共依存概念は、「関係性の病」を捉えるにあたって、他者との関係性に嗜癖するという個人的症状に着目する視点(個人的視点)と、二者関係における関係性それ自体を病と捉える視点(関係性的視点)の二つがあり、その両者が複雑に絡み合っているものが「関係性の病」であることを提示した。今後は、これまでの「関係性の病」の研究において、いかに個人的視点と関係性的視点の絡み合いが見逃されてきたか、あるいは注目されるようになってきているかを明らかにし、関係性の病の実像に迫ること、また、病的な関係性にも肯定的な側面があることに光を当てることで、分離とは異なる解決方法を探ることを目的として研究する。
|