研究課題
バイオペースメーカー作製のための分子基盤の確立には、幹細胞のペースメーカーへの分化誘導実験だけではなく、刺激伝導系形成の発生学的アプローチによって得られる研究結果が必要不可欠であると考える。しかし、マウスをはじめとした哺乳類における心臓発生過程での刺激伝導系形成の分子機序については、未だ明かではない部分が多い。これまでの研究結果から、心流入路に発生するEdnra陽性細胞群と刺激伝導系形成との関連に着目し、主に以下の研究を行った。1)心流入路Ednra陽性細胞群の細胞系譜解析―Ednra-CreERT2マウス2)Mouse-Chickキメラによるin vivo刺激伝導系再構築の試み3)心流入路Ednra陽性細胞群の刺激伝導系分化誘導培養系の試み心流入路Ednra陽性細胞群の系譜解析を行うため、Ednra-CreERT2 ; R26Rマウス胎生7.25日および8.25日(E7.25, E8.25)において、タモキシフェンを母胎に投与した結果、β-galで標識されたEdnra陽性細胞群は、左心室・両心房における作業心筋だけではなく、洞房結節をはじめとした刺激伝導系に寄与することが確認された。さらに、Ednra-CreERT2 ; R26Rマウス胚E8.25 (E7.25にてタモキシフェン投与)の心流入路をニワトリ胚に移植したmouse-Chickキメラの作製結果から、β-galで標識された心流入路Ednra陽性細胞群はニワトリ胚の心房・心室・房室結節付近に分布する様子が観察された。また、Ednra-CreERT2 ; R26Rマウス胚E8.25 (E7.25にてタモキシフェン投与)の心流入路由来をin vitroで培養したところ、洞房結節マーカーの1つであるTbx3陽性/β-gal陽性のコロニーが生じた。これらの結果から、心流入路Ednra陽性細胞群が刺激伝導系形成において重要な役割をになっていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
昨年度樹立したEdnra-CreERT2マウスを用いた、細胞系譜解析・マウス-ニワトリ胚キメラ作製・in vitroでの解析を通じ、"心流入路Ednra陽性細胞群は刺激伝導系形成に寄与する"という作業仮説を裏付けることができたため、②の評価をした。
来年度は、主に以下の2点に焦点を当て、研究を推進する予定である。1) Mouse-chickキメラ作製における心流入路Ednra陽性細胞群の寄与洞房結節に寄与しTbx3やHCN4などの刺激伝導系メーカーを発現するペースメーカー細胞に分化する可能性について検討する。2) in vitro培養系における心流入路Ednra陽性細胞群のペースメーカー細胞分化誘導効率よくペースメーカー細胞を分化させるシグナルの探索と、パッチクランプ・移植等の方法を用いて、培養した心流入路Ednra陽性細胞の性質を調べる。
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Mechanism of Development
巻: 130 ページ: 553-66
10.1016/j.mod.2013.07.005.