前年度までの研究成果から、遺伝子改変マウスおよびmouse-chickキメラ作製、in vitroの分化誘導等の実験を通じて、心流入路に由来するEdnra陽性細胞群が洞房結節および房室結節に寄与することを確認し、刺激伝導系形成における細胞系譜が明らかになった。研究の過程において、心血管形成に寄与する新たな細胞系譜の可能性が見出されたことから、本年度は、この新たな細胞系譜について、1)時間・空間的な挙動および2)分化の分子機序の解析を行った。 まず、1)について、鳥類胚を用いた蛍光色素標識による細胞の追跡・ウズラ-ニワトリ胚キメラの作製を行った結果、特定の発生段階において胚体外の一部から生じる組織由来の細胞群は、胚体内へ移動し、心血管形成に寄与することが明らかになった。 さらに、2)について、in situ hybridizationによる発現解析・器官培養によって、FGFおよびBMPシグナルが血管内皮・心筋分化に重要な役割を果たすことが示された。 これまで、心臓は、一次・二次心臓領域、神経堤細胞、心外膜前駆組織という複数の細胞系譜に由来すると考えられてきた。本研究において、胚体外の一部の組織に由来する細胞群にも心臓の起源が見出されたされたことから、心血管形成に寄与する細胞系譜は、現在同定されている領域よりも広い中胚葉に由来する可能性が示唆された。
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