研究課題/領域番号 |
12J08473
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
布川 莉奈 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 概日時計 / 摂餌同調時計 / 制限給餌 / 質量分析 / 時計遺伝子 / DBP / リン酸化 / ユビキチン化 |
研究概要 |
多くの生物は約24時間周期で自律的に発振する概日時計をもち、次の24時間サイクルを予知できる。概日時計の中でも、外界の明暗サイクルに同調する時計は明暗同調時計と呼ばれ、時計遺伝子による転写・翻訳フィードバックループの制御を受けて発振する。一方、食餌条件の変化に対応するための時計システムは摂餌同調時計と呼ばれ、一日の中で規則的に得られる餌の時刻を予知して探索できるため、生存競争を生き抜く上で必要不可欠であったと考えられている。本研究では、動物において特異的に発達した「摂餌同調時計」のメカニズムの解明を目指す。初年度には、様々な時計遺伝子のノックアウトマウスに対して制限給餌実験を行い、摂餌同調時計が正常に機能しているかどうか検証した。例えば、時計関連遺伝子E4bp4やDec1のノックアウトマウスに対して制限給餌を行った結果、どちらの変異マウスも野生型マウスと同様に正常な予知行動を示したことから、これらの時計関連遺伝子は摂餌時計の振動に必須である可能性は低いと思われた。 E4bp4やDec1は、明暗同調時計のサブループを構成する時計関連遺伝子である。コアとなる転写・翻訳フィードバックループにサブループが共役することは、食餌や光などの時計への入力経路と時計からの出力経路を増やす、という生物学的意義があると考えられている。Dbpも明暗同調時計のサブループを構成する遺伝子の一つであり、マウス肝臓においてmRNAレベルおよびタンパク質レベルで非常に振幅の大きい概日変動を示すが、明暗同調時計のコアループには必須でないと考えられており、あまり研究が行われていない。そこで、DBPの未知の機能に迫るため、培養細胞に過剰発現したDBPを質量分析に供した。その結果、約10ヶ所のリン酸化部位に加えて6ヶ所のユビキチン化部位を同定した。また、DBPと相互作用する因子を多数同定したが、その中には、これまで概日時計との関連が全く知られていない因子も含まれていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで「摂餌同調時計」のメカニズムの解明を目指していたが、昨年度からは明暗同調時計のサブループを構成する時計関連遺伝子にも着目し、明暗同調時計のサブループを構成するDBPタンパク質の解析を進めている。本年度は培養細胞に過剰発現したDBPを質量分析に供して多くの修飾部位や相互作用因子を同定した。
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今後の研究の推進方策 |
明暗同調時計のサブループを構成するDBPタンパク質の質量分析の結果から、DBPのリン酸化を担うキナーゼの同定や、DBPをユビキチン化して分解を促進するE3リガーゼを絞り込む。また、DBPと相互作用する因子の中には、これまで概日時計との関連が全く知られていない因子も含まれていることから、DBPの概日時計以外の生理機能にも迫る。
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