研究概要 |
本研究では固体中における光と物質の量子力学相互作用を制御するため高Q値フォトニック結晶(PhC)共振器の共振Q値制御を目的にしている。PhC共振器とマイクロ・ナノメカニカル機構(MEMS/NEMS)を組み合わせることで新たなQ値制御手法を提案した。本手法ではこれまで問題視されてきた熱と余剰キャリアの生成を抑えることが可能であり、既存のレーザーを用いた制御手法に比べ広範囲な領域にわたるQ値制御が可能であると考えられる。本年度は、素子の設計と作製方法の確立を行い、PhC共振器の電気的な制御に成功した。導波路の幅などの構造パラメータの最適化を行うことで、16Vの電圧印加によりQ値をおよそ3,000から60,000程度までおよそ20倍も変化させられることが明らかになった。従来のレーザー照射を用いた制御手法ではQ値変化幅は2倍程度であり、また最大Q値が10,000を超えるような高Q値の共振器は実現できていない。素子の作製ではこれまでのPhC共振器の作製技術とMEMSの作製技術の融合を試み、微細構造を高精度に作製する手法を開発した。低温顕微分光測定によりPhC共振器の光学評価を行い、電圧印加によりおよそ3,500から14,000までのQ値の増加を観測した。測定された4倍のQ値変化は量子ドット等の発光体を含む共振器においては最大の変化幅である。本研究は固体中において量子力学的な現象を電気的に制御する手法の一つであり、半導体素子を用いた量子情報を実現する上での基盤技術の開拓と位置づけられる。
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