研究課題/領域番号 |
12J08511
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田宮 大雅 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ヘルパーT細胞 / アレルギー / TGF β / Smad / IRF4 / 転写因子 / 分化 |
研究概要 |
本年度、私はIL-9産生性T細胞(Th9)によるアレルギー免疫調節に転写因子Smad2/3とIRF4が必要不可欠であることを導き、J. Immunol.誌に研究成果を発表した(Tamiya et al. J. Immunol. 2013)。この研究に取組んだきっかけは所属研究室がTGF-β-Smad2/3シグナルの活性化が①T細胞増殖因子であるIL-2の産生を抑制すること(Wakabayashi and Tamiya et al. J. Biol. Chem. 2011)、②制御性T細胞の分化誘導により免疫システムを抑制していることを解明(Takimoto et al. J. Immunol. 2010)したことにある。 IL-9産生性T細胞(Th9)はアレルギー性喘息の悪化に関与しており、IL-4およびTGFbの刺激によって誘導される。これらの刺激、特にTGFbによってどのようにIL-9が発現制御されているかは今まで知られていなかったため、我々はTGFbの下流シグナルである転写因子Smad2/3に着目した。 Smad2/3欠損マウスを用いた実験より、T細胞によるIL-9産生にSmad2/3が必要不可欠であることが示唆された。さらにSmad2/3はIL-9プロモーター上で転写因子IRF4と結合し、協調的に作用することによって転写促進性のヒストンのアセチル化・メチル化を引き起こし、IL-9の転写を誘導することが考えられた。最後にOVA誘発性喘息モデルを用いて実験したところ、T細胞特異的Smad2/3欠損マウスでは喘息症状が軽度になることが確認された。Smad2/3欠損によるT細胞由来のIL-9産生量の低下が喘息症状を軽度にしたことが考えられた。 免疫抑制に関わるTGFb-Smad2/3シグナルが炎症性細胞のTh9分化にも必須であることは新たな発見である。動物モデルにおいて抗IL-9抗体による喘息症状の改善が認められており、現在ヒトでも抗IL-9抗体を用いた臨床試験が行われている。Th9への分化を調節できれば、アレルギー性喘息等の自己免疫性疾患の治療に役立てることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究課題である TGF β-Smad シグナルとヘルパーT 細胞分化にっいての研究内容をJ. Immunol.誌に研究成果を発表した。よって3年目には、この研究成果をもとにした治療応用の検討が期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
転写因子Smad2/3やIRF4の阻害剤を用いて実際にアレルギー性喘息モデルにおいて治療効果がみられるのかを検討するとともに、ヒトにおいても同様のメカニズムが存在しているのかをヒト末梢血細胞を採取し確認を行う予定である。さらに、本研究ではエピジェネティクスに着目し、免疫学と結びつけることができた。今後は転写因子の結合やヒストンのメチル化などを遺伝子全体で調べることができる次世代シーケンサを用いることにより、免疫細胞におけるエピジェネティクスの変化をゲノムワイドに捉えていきたいと考えている。現在、実際に私が主体となって次世代シーケンサの使用方法やサンプルの調整法などを所属研究室用に最適化している段階である。
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