今年度は主要テーマである”活性化されたエフェクターT細胞を抑制型のT細胞に転換(リプログラム)する”というテーマで研究に取り組んだ。これまでに免疫抑制性サイトカインTGFβはナイーブT細胞からFoxp3陽性抑制性T細胞を誘導することはすでに示されている。またIFNγやIL-2の抑制もナイーブT細胞において顕著に認められる。しかしすでに分化しているTh1などのT 細胞はTGFβに対して抵抗性を示し、TGFβを添加してもIFNγ、IL-2産生に変化は見られない。その要因として、TGFβシグナルのどこかの段階で抑制が働いていると考え、その受容体のmRNA発現量に注目したところ、エフェクターT細胞ではTGFβ receptorⅡの発現量がナイーブT細胞と比較して有意に低下していることを発見した。そこでTGFβによって活性化される転写因子Smad3やTGFβ receptorⅡをTh1にウィルスを用いて過剰発現させ、TGFβ存在下にて培養したが、Foxp3が発現してくることはなかった。さらにサイトカインのシグナルを負に制御するSOCS1/3やIL-2転写抑制に関わることが示唆されたヒストンメチル化酵素Suv39h1をTh1に過剰発現させたが、同様の結果であった。またヘルパーT細胞サブセットの一つであるTh17はFoxp3陰性であるがIL-6とTGFβの存在下で分化することに着目し、TGFβ単体の刺激によってTh17がFoxp3を発現するかを検討した。Th17条件にて1週間培養したTh17(earlyTh17)はTGFβ単体の刺激によりFoxp3を発現する細胞がみられたが、3週間以上培養したTh17(lateTh17)ではそれがみられなかった。Th1とTh2同様に完全分化したTh17ではTGF-βのみの刺激ではiTregに転換することは不可能であることが示唆された。
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