研究課題
平成25年度は、苦味標準物質キニーネがTRPP3チャネル活性を制御する様式について詳細に検討した。TRPP3発現細胞にキニーネを作用させwash outすると、濃度依存性にTRPP3電流が増大した。この際、シングルチャネルコンダクタンスではなくチャネル開確率が増加することを明らかとした。続いてTRPP3の機能調節サブユニットと考えられているPKD1L3をTRPP3と共発現したが、TRPP3単独発現の場合と比較してキニーネの効果に有意な差はみられなかった。したがって、キニーネの効果はTRPP3分子への直接作用であることが示唆された。また、TRPP3チャネルのゲーティングは高温刺激によっても調節されることから、TRPP3チャネルのキニーネ応答に対する温度の影響について検討した。その結果、32℃におけるキニーネ誘導性のTRPP3チャネル活性化は25℃の場合と比較して小さかった。これより、温度刺激とキニーネが協同的にTRPP3チャネルを制御することが示唆された。前年度の研究において、TRPP3チャネルの不活性化に選択性フィルター近辺のドメイン(531-534 : NANR)が重要であることを見出した。それゆえ本年度は、このドメインの各アミノ酸残基の点変異体(N531Q、N533Q、R534Q)を作製した。N533QおよびR534Q変異体において、野生型と比較して脱分極により生じる外向き電流が増加し、再分極後のテール電流が減少した。これより、これらの変異体ではTRPP3の不活性化が消失していると考えられた。続いて細胞外pHの効果を検討したところ、チャネル活性はアルカリpH依存的に亢進した一方で、野生型で観察されたアルカリ除去による活性化を生じなかった。以上の結果から、533番目のアスパラギン残基および534番目のアルギニン残基がTRPP3の不活性化機構に必須である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
TRPP3チャネルの電位やアルカリによる不活性化に重要なアミノ酸残基をTRPP3変異体の電気生理学的解析により見出した。現在、この研究成果をまとめた論文を作成中である。また、キニーネによるTRPP3チャネルの活性調節メカニズムを見出し、温度刺激と協同的にTRPP3を制御することを示唆する知見を得た。この結果は温度による苦味変化を考える際の重要な手がかりになると考えられる。また、TRPP3ノックアウトマウスを用いる実験準備も順調に進めている。
これまでの研究より、TRPP3チャネルが苦味受容に関与することが推定される。そこで、TRPP3ノックアウトマウスを用いて各種味覚物質に対する二瓶選択実験を行うことにより、TRPP3を介した苦味受容について評価する。またinvitroにおいて、TRPP3の不活性化が消失した変異体(N533QおよびR534Q)にキニーネを作用させたときの電流応答を解析し、TRPP3の苦味応答と不活性化基盤との関連性について検討する。さらに、TRPP3ノックアウトマウス由来の単離味細胞に対してパッチクランプ法を適用し、これまでにinvitroで観察されたキニーネなどによる苦味応答、さらにはアルカリ応答や温度によるチャネル活性変化が消失するのかについて検討する。
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Pflϋgers Arch. Eur. J. Physiol.
巻: (印刷中)
10.1007/s00424-013-1439-1
Biol. Open
巻: 3巻 ページ: 12-21
10.1242/bio.20136205
http://www.pha.u-toyama.ac.jp/phaphy1/index-j.html