研究概要 |
平成24年度に引き続き, 平成25年度も, ボレル可測函数(ベール函数)の分類理論および無限ビット列のランダム性の理論の2つの分野に対する研究を推し進めた。また, 平成25年度はそれに加え, ポーランド空間の位相次元の計算論的研究も行った. ボレル可測函数の分解問題に関しては, ダルムシュタット工科大学(ドイツ)のVassilis Gregoriades氏との共同研究において, Louveauの分離定理を応用することによって, 24年度に申請者が得た分解定理における前提部分の連続性の仮定を外すことに成功し, 分解予想を完全解決へと大幅に近づけた. また, 東京大学の宮部賢志氏と共に, 整数列のランダム性の分析を進めた. 24年度に加えて, 観測に相対的なランダム性の基礎付け, という観点から, ランダム性の理論をクリプキ-プラテク集合論KPの上で展開した. その結果, KPのモデルに相対化された数列のトリビアル性概念と, 実数の集合論における零加法性概念が同値であることを示した。また, 全ての整数列の情報をあるMartin-Lofランダム列から抽出できるというKucera-Gacsの定理と, 実数の集合論における強零集合の概念との関連性を明かした. さらに, ケンブリッジ大学(イギリス)のArno Pauly氏と共同研究を行い, 位相次元論とチューリング次数構造の関連性を明らかにした. また, 無限次元空間の次数構造の分析を行い, 無限次元トポロジーにおけるアレクサンドロフの問題「有限次元部分空間の可算和にならない弱無限次元コンパクト距離空間は存在するか」に対するPolの反例空間を用いることによって, カントール空間(チューリング次数構造)とヒルベルト・キューブ(連続次数構造)の真の中間に位置するコンパクト距離空間の次数構造が存在することを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ベール函数の分類研究に対しては, 新たな発想を用いて, 前年度に得られた分解定理における連続性の仮定を除去することができた点が大きな進展である. また, 一般位相空間上の次数構造については, 位相次元と次数構造の想定外の結び付きを発見し, 無限次元トポロジーの深い理論を応用することによって, 次数構造に関する定理を得られた点が大きな成果である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究で, Laver forcingなどの一部のarboreal forcingを弱い集合論のモデルで取り扱うのが難しいことが分かった. 今後は, Kreiselのコンパクト性などの下からの近似的手法でLaver forcingなどの分析を行い, ランダム性の理論における分離手法としての確立を目指す. また, 次数構造と位相次元の関連性は示されたが, その原因部分が未だ明白ではない. 今後は, その関連性の背後構造を探るために, 無限次元トポロジーにおける具体的な反例空間の計算構造の分析を行う. また, 逆に, 計算論的手法が無限次元トポロジーにおける空間構成に役立つかを調査する.
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