これまで開発してきた尺度の改訂を行い,自閉性スペクトラム障害知識尺度(Literacy Scale of Characteristic of Autistic Spectrum Disorder : LS-ASD)を項目反応理論(IRT)に基づいて開発した(酒井他,2014)。LS-ASDはASDの障害特性に関する知識度を測定する尺度であり,知識を問うという性質上,同一の回答者の知識度を複数回推定する際には,異なる項目に回答してもらうことが望ましい。分析の結果LS-ASDは項目群を複数(例えば22項目の項目群2つ)に分けて実施することが可能な尺度であることが確認された。 教育現場においてはASDのみではなく,ADHD(注意欠如多動性障害)やLD(学習障害)などの知識も必要とされる。求められる知識が多いということは,その知識度を測定するためには多くの項目が必要となる。そのため,LS-ASDのように少ない項目への回答で,十分な精度が確保された尺度は有用である。そして,確実な研修効果をもつプログラムの開発には,このような尺度が必要不可欠である。現在,ADHDとLDの尺度も開発中である。 次に,教育現場ではどれくらいの知識度が必要であるのか,を明らかにするために,高等学校の教師とその教師が関わる高校生を対象に調査を実施した。その結果,高等学校に在籍しているASD傾向の生徒の存在に適切に気づいている教師のASD知識度は,おおむね0.700以上(0.000を平均値として,1.000で1標準偏差分高い知識をもつことを意味する)必要であることが示された。このことによって,心理教育プログラムによって高めるべき教師のASD知識度の目標値を明確した。目標値が明確になることによって,効率的かつ確実な効果をもたらすプログラムの構成・内容の決定に必要不可欠であった。
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