本研究は、南部アフリカ農村部の生計維持・向上において都市との関係が果たす役割について明らかにし、農村と都市との間にみられる流動性を考慮した地域発展の在り方について検討することを目的としている。研究対象地域はザンビアとジンバブウェである。 三年目である平成26年度は、ジンバブウェの地方都市における補足調査を実施した。ジンバブウェでは2000年以降のマクロな政治・経済構造の変化が、対象とした地方中小都市の主たる産業である商業漁業の動態、それに伴う農村部からの人口流入、に影響を与えていた。ジンバブウェでの調査結果については、アフリカ地域研究や漁業研究に関わる研究会及び学術大会において報告した。これらを通じて、関連する分野の研究者らと意見交換を行い、論文執筆のための論点を整理することができた。また、主に地理教育関係者が購読する月刊「地理」における「東・南アフリカ特集」にジンバブウェに関する短文を寄稿した。日本では情報が限定されがちなジンバブウェの実態とそこに暮らす住民の生活について、より広く社会に知ってもらう機会となったと考えている。 今年度は、これまでのザンビアでの研究成果を学術書として出版するための作業に取り組んできた。博士論文ではザンビア農村社会の変容を中心に記述したが、それを現代のアフリカ都市--農村関係に位置づけるように加筆・修正を行った。単著の出版作業を通じて、アフリカ農村における都市との関係性が変化し、その相互作用が両者の理解にますます重要となっていることを改めて確認された。
|