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2012 年度 実績報告書

造血幹細胞における分子シャペロンMortalinの機能解析とその制御

研究課題

研究課題/領域番号 12J08602
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

田井 育江  慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)

キーワード造血幹細胞 / 血液幹細胞 / 未分化性維持機構 / 自己複製能 / 分子シャペロン / 熱ショックタンパク質 / ミトコンドリア / 活性酸素
研究概要

正常造血幹細胞の未分化性維持機構を解明することは、造血幹細胞移植における幹細胞の体外増幅の効率化のみならず、癌幹細胞の性質理解にとっても大きな知見となる。造血幹細胞における幹細胞性維持機構では、「細胞周期を静止期に留めること」と、「活性酸素種曝露から細胞を保護すること」が重要である。本研究では、活性酸素種の最大の発生源であるミトコンドリアに着目し、ミトコンドリア特異的に機能する分子シャペロンmortalinについて、造血幹細胞の幹細胞性維持における機能解析を進めている。
これまでの解析により、mortalinが造血細胞の中でも特に未分化な造血前駆細胞・造血幹細胞のミトコンドリアで高発現しており、造血幹細胞のミトコンドリア制御において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。そこで、8週齢の成体マウスから造血幹細胞を単離し、mortalin阻害剤MKT-077を添加する、あるいは添加しない条件(コントロール)で1週間in vitro培養を行い、維持もしくは増幅された造血幹細胞の割合とその性質を解析した。その結果、コントロールと比べてMKT-077添加群では、MKT-077濃度依存的に、造血幹細胞の割合が大幅に減少し、活性酸素種の蓄積量が増大していることが明らかになった。続いて、レトロウイルスによるmortalinノックダウンを行った造血幹細胞を用いて、造血幹細胞移植実験を行い、mortalinノックダウンによる骨髄再構築能の変化を解析した。その結果、mortalinをノックダウンした造血幹細胞は、コントロールと比べて骨髄再構築能がシビアに低下しており、さらに細胞周期が亢進していた。これらの結果より、mortalinの欠損は、造血幹細胞の未分化性維持機構を大きく破綻させることが明らかになった。また、レトロウイルスによるmortalin強制発現を行った造血幹細胞を用いた、造血幹細胞移植実験も行った。その結果、mortalinを強制発現した造血幹細胞は、コントロールと比べて骨髄再構築能が顕著に上昇しており、活性酸素種の蓄積量も大幅に低下していた。本研究により、mortalinの発現量を増加させることで造血幹細胞の体外増幅を質的・量的に向上させる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

造血幹細胞のミトコンドリア機能の維持・活性酸素種からの細胞保護の重要性に着目し、ミトコンドリア特異的な分子シャペロンmortalinが造血幹細胞において活性酸素種の蓄積を負に制御し、未分化性維持に重要であることを明らかにした。現在までに、mortalin阻害剤を用いた解析、レトロウイルスによるノックダウン、過剰発現による解析により、造血幹細胞におけるmortalinの重要性を示すデータを得ている。さらに、造血幹細胞におけるmortalinを介した未分化性維持のメカニズムに迫るため、抗mortalin抗体で得た免疫沈降物を用いて質量分析を行い、mortalinと共に機能し得る結合因子候補をいくつか見出している。

今後の研究の推進方策

Mortalinをノックダウンした造血幹細胞や、mortalinを強制発現した造血幹細胞を用いて、網羅的遺伝子発現解析を行い、mortalinの発現によって変動する遺伝子群を探索して質的な評価を行う。この知見に加えて、抗mortalin抗体で得た免疫沈降物を用いた質量分析の結果から、mortalinと機能し得る結合因子候補をいくつか選出し、実際に結合しているがどうかを免疫沈降法によって確認・同定する。この際に得られたmortalin結合因子についても、mortalin同様、造血幹細胞の未分化性維持に重要な機能を持つかを骨髄移植実験などによって評価し、mortalinを介した新たな幹細胞性維持機構を見出していく。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Functional analysis of a mitochondrial heat shock protein, Mortalin in hematopoietic stem cells2012

    • 著者名/発表者名
      Ikue Tai. Peng Zou, Toshio Suda
    • 学会等名
      第8回麒麟塾
    • 発表場所
      コクヨホール, 東京
    • 年月日
      2012-07-07

URL: 

公開日: 2014-07-16  

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