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2013 年度 実績報告書

造血幹細胞における分子シャペロンMortalinの機能解析とその制御

研究課題

研究課題/領域番号 12J08602
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

長柄 育江 (田井 育江)  慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)

キーワード造血幹細胞 / 血液幹細胞 / 未分化性維持機構 / 自己複製能 / 分子シャペロン / 熱ショックタンパク質 / ミトコンドリア / 活性酸素
研究概要

正常造血幹細胞の未分化性維持機構を解明することは、造血幹細胞移植における幹細胞の体外増幅の効率化のみならず、癌幹細胞の性質理解にとっても大きな知見となる。造血幹細胞における幹細胞性維持機構では、「細胞周期を静止期に留めること」と、「活性酸素種曝露から細胞を保護すること」が重要である。本研究では、活性酸素種の最大の発生源であるミトコンドリアに着目し、ミトコンドリア特異的に機能する分子シャペロンmortalinについて、造血幹細胞の幹細胞性維持における機能解析を進めている。
これまでの解析により、mortalinは造血幹細胞や前駆細胞といった未分化な細胞分画において非常に高く発現しており、主にミトコンドリアに局在することが示された。造血幹細胞におけるmortalinの機能低下は酸化ストレス増大による造血幹細胞のシビアな枯渇が生じる。また、一方でmortalinを機能亢進させると、コントロールと比べて著しく造血幹細胞の未分化性が維持された。このことは、生体外で造血幹細胞を増幅させる技術において有用な知見となる。Mortalinによる造血幹細胞の未分化性維持機構の詳細を調べる目的で、血液細胞株を用いてmortalinの結合因子の探索を行った。その結果、複数の興味深い候補因子が見出され、現在mortalinとの関係性を解析しているところである。本研究では、mortalin結合候補遺伝子の1つとして"パーキンソン病責任遺伝子"DJ-1に着目した。免疫沈降により、mortalinとDJ-1が結合することを造血細胞で初めて見出した。さらに、mortalinとDJ-1は酸化ストレス依存性に共局在することを見出した。続いて、DJ-1ノックアウトマウスにおける造血幹細胞の解析を行ったところ、DJ-1機能がないと顕著な造血幹細胞集団の枯渇が生じていた。また、mortalinの活性酸素制御能力は、DJ-1に依存することも示された。本研究によって、造血幹細胞の活性酸素制御機構とそれに付随する幹細胞性維持機構には、mortalin-DJ-1経路が必須であることが見出された。この知見は、幹細胞性が何によって定義されているのかという問いに対する新たな理解につながるだけでなく、mortalinが幹細胞の体外増幅時における生体外ストレスの曝露から幹細胞を保護することで、効率よい体外増幅を実現する可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

造血幹細胞の幹細胞維持において、酸化ストレス応答の制御は重要である。本研究は、活性酸素産生のメインの場であるミトコンドリアに着目し、ミトコンドリア恒常性維持に寄与するミトコンドリアシャペロンmortalinが活性酸素の蓄積量を負に制御することで、造血幹細胞の未分化性維持に必須であることを証明した。さらに、免疫沈降、質量分析等により、複数のmortalin結合因子を同定した。また、免疫沈降によって"パーキンソン病責任遺伝子"であり活性酸素消去に重要なDJ-1とmortalinが結合することを血液細胞で初めて見出した。DJ-1ノックアウトマウスを用いた解析により、DJ-1ノックアウトマウスでは造血幹細胞集団がシビアに枯渇しており、造血幹細胞においてDJ-1機能の重要性が示唆された。

今後の研究の推進方策

免疫沈降、質量分析によって見出された複数のmortalin結合因子について、非常に興味深い分子が検出されている。Mortalinは分子シャペロンであり、複数のクライアントタンパク質を結合相手に持つことは不思議ではなく、mortalinはシャペロン活性により、これら結合候補因子のタンパク質機能を成熟させている可能性がある。従って、これら結合候補因子の中でも特に幹細胞維持に重要と思われる分子について、mortalinとの結合を免疫沈降で確認し、新規mortalin結合因子を探索する。この際に見出された新規mortalin結合因子に関して、造血幹細胞において未分化性維持に重要な機能を持つかを骨髄移植の系で評価し、mortalinを介した新たな幹細胞性維持機構を見出していく。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Mortalin and DJ-1 coordinately regulate hematopoietic stem cell function through the control of oxidative stress.2014

    • 著者名/発表者名
      Ikue Tai-Nagara, Sahoko Matsuoka, Hiroyoshi Ariga, Toshio Suda
    • 雑誌名

      Blood

      巻: 123(1) ページ: 41-50

    • 査読あり
  • [学会発表] Molecular chaperon, mortalin, sustains HSC stemness via cytoprotective effect from oxidative stress.2013

    • 著者名/発表者名
      Ikue Tai, Sahoko Matsuoka, Toshio Suda
    • 学会等名
      第75回日本血液学会学術集会
    • 発表場所
      ロイトン札幌
    • 年月日
      2013-10-12

URL: 

公開日: 2015-07-15  

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