研究課題/領域番号 |
12J08608
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
山田 雄二 東京薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ラミニン / ペプチド / 基底膜 / アガロース / ヒアルロン酸 / シンデカン / インテグリン / 再生医療 |
研究概要 |
平成24年度には、以下に示すようにラミニン由来の細胞接着ペプチドをアガロース、ヒアルロン酸に固定化したペプチド-高分子複合体に関して研究を実施した。(1)ラミニン由来の細胞接着ペプチドAG73(細胞表面受容体のシンデカンに結合)を用いて硬さの異なる3種類のAG73/アガロースゲルを作製し、4種類の細胞を用いて生物活性を評価した。その結果、AG73/アガロースゲル上での細胞挙動はゲルの硬さによって大きく異なることが明らかとなった。そしてこれらの挙動の違いには細胞接着分子であるカドヘリンとインテグリンが関わっていることが示唆された。本研究によりペプチド/アガロースゲルは硬さによって機能を制御できることが明らかとなった。ペプチド/アガロースゲルは平面的な二次元細胞培養から、三次元的なゲル内細胞培養まで、幅広い用途への応用が期待される。(2)ペプチド-高分子複合体の足場材料としてヒアルロン酸を用いることで、より生体内への移植に適したタイプの人工基底膜の開発を試みた。HDF(ヒト皮膚由来線維芽細胞)及びPC12細胞(ラット副腎髄質クロム親和性細胞腫)を用いて詳細な生物活性の解析を行った。細胞表面のインテグリンに結合するA99ペプチドとシンデカンに結合するAG73ペプチドを用いてペプチド-ヒアルロン酸マトリックスを作製した結果、それらは細胞接着活性を示し、PC12細胞の神経突起伸長も促進した。さらに、A99とAG73を9:1で混合しピアルロン酸マトリックスに修飾した場合に、それぞれのペプチドを単独で用いるよりも優れた生物活性を示すことが明らかとなった。また、9:1で混合したA99/AG73を修飾したヒアルロン酸ゲル内で細胞を三次元培養した結果、HDFの伸展や、PC12細胞の神経突起伸長が観察された。本研究により、混合ペプチドを結合させたヒアルロン酸マトリックスは基底膜に近い生物活性を持ち、再生医療を目的とした人工基底膜の開発に有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の1年目の計画に記載したペプチド-アガロースマトリックス及びペプチド-ピアルロン酸マトリックスに関する研究は平成24年度内に概ね遂行され、ペプチド-アガロースマトリックスの研究内容については既にBiomaterials誌に掲載されており、ペプチド-ピアルロン酸マトリックスの研究内容については現在論文執筆中で、近日中にBiomaterials誌に投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は渡航先である米国NCI/NIHにてJoel Schneider博士にご協力いただき、基底膜の機能を模倣したペプチド-高分子複合体の有用性の評価を行う。受容体特異的に結合する複数のラミニン由来ペプチドと、キトサン、アルギン酸、アガロース、ピアルロン酸、コラーゲンに固定化し、生物学的機能を評価する。また、Joel Schneider博士の研究しているペプチド超分子ゲルが人工基底膜の新たな材料として有用であることも見出しており、今後の研究計画に新たに加える予定である。さらに、米国NCI/NIHではヒト胚性幹細胞(hES細胞)を用いた実験ができるため、ペプチド-高分子複合体の生物活性評価にhES細胞を利用することを予定している。
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