平成25年度には、以下に示すようにラミニン由来の細胞接着ペプチドをピアルロン酸に固定化したペプチド-高分子複合体と細胞接着配列を自己会合ペプチドゲルに導入した新規ペプチドマトリックスに関して研究を実施した。①平成24年度、細胞表面のインテグリンに結合するA99ペプチドとシンデカンに結合するAG73ペプチドを9:1で混合しヒアルロン酸マトリックスに修飾した場合に、それぞれのペプチドを単独で用いるよりも優れた生物活性を示すことを明らかにした。また、A99/AG73を修飾したヒアルロン酸ゲル内で細胞を三次元培養した結果、HDFの伸展や、PC12細胞の神経突起伸長が観察された。本研究により、ペプチド-ヒアルロン酸マトリックスは再生医療を目的とした人工基底膜の開発に有用であることが示された。本年度はヒアルロン酸ゲル内で三次元培養されたHDFのコラーゲン発現量がペプチドにより促進されることをPCR解析により明らかにし、これまでのデータとまとめてBiomaterials誌に投稿した。②米国NCI/NIHのJoel Schneider博士の研究するペプチドは自己会合により生理的条件下でヒドロゲル(超分子ゲル)を形成することが特徴で、その機械的強度や生体適合性などから生体材料としての応用が期待されている。本年度はこの自己会合ペプチドを細胞培養マトリックスとして応用するため、HDF(ヒト皮膚由来線維芽細胞)を用いて細胞接着活性の解析を行った。グルタミン酸とバリンの繰り返しを基本とする負電荷の自己会合ペプチドに対して細胞は接着しないが、このペプチドのN末端にインテグリン受容体に特異的に結合するRGD配列を導入すると、インテグリンを介した細胞伸展を伴う細胞接着を促進することが明らかとなった。このように受容体特異的な細胞接着性を有するペプチドゲルは人工基底膜創製の材料として、再生医療への応用が期待される。
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