研究概要 |
本年度は主にウェイクアップ無線ネットワーク基盤技術に関する研究を中心に行った. ウェイクアップ無線ネットワーク基盤技術の検討として, ワイヤレスハーネスにおけるウェイクアップ無線通信を想定し, エラー環境下でのウェイクアップ無線通信に関する検討を行った. ワイヤレスハーネスへのウェイクアップ方式の適用に向けては, 低遅延・高信頼なウェイクアップの実現が求められる. また, 機器内に存在する既存の小型センサノードを置き換える必要があるため, 小規模な回路で低消費電力にエラー対策を行うことが重要となる. 高信頼なウェイクアップ通信の実現に向け, まず, ウェイクアップ型無線通信におけるエラー対策に関して調査した. この結果, これまでの研究は既存エラー対策の使用を暗黙的に想定していることを確認した. 次に, ウェイクアップ無線通信への既存エラー対策の適用として, 再送とエラー訂正について検討した. 再送はウェイクアップ型ワイヤレスハーネスにおいては機器の動作遅延に直結する, このため, 再送回数をできる限り削減することが求められる. エラー訂正は訂正回路の複雑性から回路規模の拡大と消費電力の増加が問題となる. 本研究では, ウェイクアップ無線通信におけるエラー対策においてエラーを訂正する必要がないことに着目し, エラー耐性を有するIDマッチング手法を示した. 計算機シミュレーションと回路設計を行い, 受信待機電力, 遅延を削減しつつ, エラー訂正符号であるBCH符号と同等のエラー耐性を小規模な回路によって実現できることを確認した. これまで注目されてこなかったウェイクアップ無線通信におけるエラー対策が, 省電力化の観点からも重要であることが示されたと言える. ウェイクアップ無線通信の今後の研究の方向性の1つとなり得る.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は, ウェイクアップ型無線通信を無線センサネットワークに適用するためのネットワーク基盤技術を開発し, これを用いて実現される「ウェイクアップ型無線センサネットワーク」の性能を明らかにすることである. 本年度は機器内ワイヤレスハーネスにおけるセンサ・コントロールユニット間の通信へのウェイクアップ型無線適用に向けて, エラー耐性を有するIDマッチングの検討を行い, 国内研究会・国際会議・雑誌論文への投稿を行った. 当初の計画通りに研究が進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
ウェイクアップ機構を実現するために必須となるウェイクアップモジュールのハードウェアを設計し, これを用いてウェイクアップセンサノードの実現を進める. 特に, 鍵となるウェイクアップモジュールアナログフロントエンド回路について検討を行う. ウェイクアップモジュールアナログフロントエンド回路では省電力化が極めて重要となるため, 省電力化に向けて有望とサブサンプリングなどの技術の導入を積極的に検討し, 可能であればこのような技術を取り入れたアナログフロントエンド回路の開発を目指す. ウェイクアップモジュールアナログフロントエンド回路の開発は困難が予想されるため, これを実現できなかった場合には, ネットワークシミュレータや既存のセンサノードを用いた疑似ウェイクアップセンサノードを用いなどしてウェイクアップ型無線センサネットワークの評価を行うなどして対応する.
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