研究課題/領域番号 |
12J08652
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野村 悠祐 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 超伝導 / 電子格子相互作用 / 強相関電子系 / 第一原理計算 / downfolding |
研究概要 |
電子電子相互作用と電子格子相互作用がともに重要であるような超伝導体のメカニズムを解明するためには、電子電子相互作用・電子格子相互作用の両方の有効模型のパラメータを非経験的に導出し(有効模型導出)、それらを同等に取り扱える手法で解析する(有効模型解析)ことが必須である。電子電子相互作用のパラメータは最局在ワニエ関数と制限乱雑位相近似を用いて導出され、フラーレン及び芳香族超伝導体が強相関物質であることを明らかにしたが、電子格子相互作用の見積もりの方法論は確立されてない。 本年度は、電子系と格子系がカップルした系の電子格子相互作用とフォノンの周波数の有効パラメータを評価する手法の開発に取り組んだ。原子核イオンの変位がもたらすポテンシャルの変化は電子による遮蔽を受け、電子はその遮蔽されたポテンシャル変化を感じて散乱される。この遮蔽のうち低エネルギーの電子自由度からくる遮蔽の効果は有効模型解析の際に取りこまれるので、有効模型導出の際にはその効果を取り除いておく必要がある。有効電子格子相互作用は、低エネルギー自由度の遮蔽の効果以外で部分的に遮蔽された原子核イオンのポテンシャル変化による電子散乱の行列要素として計算される。フォノンの一体項の周波数に関しても低エネルギー電子自由度の分極によるフォノンの自己エネルギーの効果を取り除いて評価する。この手法を鉄系超伝導体であるLaFeAsOに適用し、電子格子相互作用が軌道揺らぎを増大させうるかの可能性を議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は電子系と格子系がカップルした系に対する低エネルギー有効模型導出の方法論開発には数年かかると考えていたが、オープンソースであるQUANTUM ESPRESSOパッケージのDensity-Functional Perturbation Theoryに基づく原子核イオンの変位がもららすイオンポテンシャルの摂動に対する電子密度の応答を計算する部分に改変を加えることで、低エネルギー有効模型のハミルトニアンの中の有効電子格子相互作用、及びフォノンの周波数を求めることに成功した。この手法は電子系と格子系がカップルする系に対する有効模型構築の標準的手法になることが期待される。予定よりも早く方法論の開発を達成したので(1)の評価が妥当と考える。
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今後の研究の推進方策 |
開発した電子系と格子系がカップルした系に対する低エネルギー有効模型導出の方法を使って炭素系超伝導体であるフラーレン超伝導体の有効模型、具体的には多軌道ババード・ホルシュタイン模型を導出する予定である。この有効模型の解析には動的平均場理論を用いることを考えている。 また予定よりも早く方法論の開発が進んでいるので、当初の予定であった炭素系超伝導体への適用のみならず、格子系の自由度が大事だと考えられる強誘電体、もしくはマルチフェロイックスの分野へのこの手法の適用も視野に入れている。
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