研究課題/領域番号 |
12J08665
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 草大 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 変体漢文 / 平安時代語 / 古記録 / 古文書 |
研究概要 |
研究課題は「変体漢文を中心とする日本語文体史の研究」であり、日本語書記法として最も長い歴史を有する(上代から近代初期まで見られる)文体の一つである「変体漢文」を主たる対象とする。変体漢文は上述の如く非常に長い歴史を有する一方で、現代ではほぼ絶滅しているという二面性を持ち、これについて研究することは「日本語史」を総体的に描写するには不可欠であり、またそれらの研究成果を広く公表することは教育的意義も大きいと考える。 当年度は、平安時代における変体漢文の特徴・性格を解明することを主たるテーマとした。この時代の二大文体である和文体と漢文訓読体との関係について先行研究よりも論考を進めるために、「文体間共通語」に着目した。これは、和文・訓読文の双方に現れるが、その用法に両文体間で異なりのある語を調査し、変体漢文においてはどちらの用法が採用されているかを見ることによって、変体漢文の言語の性格の一面を捉えようとしたものである。 この手法に依拠して田中は「変体漢文の語彙と文体についての一試論」と題する修士論文を提出した(2011年度)が、ここでの結論は、文体間共通語の用法から見ても、変体漢文の言語は和文体と漢文訓読体の混淆状態にあるということであった。 本年度は、この修士論文を基礎に、用例の洗い直しや、調査語を追加するなどして考察を深めていった。その過程で、論考や結論にも重要な修正・発展があり、例えば2012年10月の第107回訓点語学会研究発表会における発表では、単なる混淆というよりはむしろ和文的性格の強いものではないかという観点から発表を行なった。この観点は現在まで継続しており、その後『訓点語と訓点資料』第130輯・『日本語学論集』第9号に発表した2本の論文でも複数の文体間共通語の例に基づいて論を展開している。 他には、一時代における変体漢文資料(様々な文書、日記を中心とする古記録、軍記物等の典籍と、幅広い種類を有する)を修士論文では比較的等質と見るきらいがあったが、文体間共通語の用法調査から、資料毎に性格の異なりを見出すに至り、上記の学会発表や投稿論文においてもその点を指摘した(資料毎の性格の異なり自体については先行研究においても指摘があるが)。 これらの研究成果は、これまで和文・訓読文と並ぶ平安時代語のバリエーションとして知られる一方で、その言語的性格について具体的に論究されることの比較的乏しかった変体漢文についての認識を推し進めることになると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」において示した主軸の一つに「変体漢文の言語的性格を、同時代の他文体との対照において解明する」ということがあるが、著名な変体漢文資料の多く存する平安時代について、和文・訓読文との関連に注目して研究を進め、口頭発表及び論文発表の形でその成果も公表するに至っているため。
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今後の研究の推進方策 |
当年度に引き続き平安時代における変体漢文の言語的性格の解明を重点的に目指す。変体漢文で書かれた資料自体は、上代から近代初期に至るまで見られるが、平安時代には源氏物語などの和文と、訓点資料に中心的に見られる漢文訓読語との顕著な対立が知られており、両文体と対照しての変体漢文の性格の解明が特に望まれていると考えるためである。 当年度は和文語との関係に焦点を当てる面が強かったが(後掲の「研究発表」参照)、次年度以降は漢文訓読語との関係なども改めて考究し、「和漢混清」として知られる変体漢文の言語的性格を一層分析的に捉えることを目指す。
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