C57BL/6マウスを実験動物として用い、骨格筋サンプル100mgから不純物の混入を起こすことなくミトコンドリアを単離するに成功した。具体的な方法としては、筋サンプルをホモジェナイズした後にPercollgradientを用い超遠心することによって単離した。 さらに、昨年度行った一過性の運動によるミトコンドリア新生を検討する実験に加えて、本年度は除神経による不活動モデルを用い実験を行った。座骨神経の除神経手術から10日後に腓腹筋サンプルを採取しWestern Blotting法によりタンパク質量を測定したところ、ミトコンドリア新生のマスター遺伝子として知られるPGC-1αやグルコースのトランスポーターであるGLUT4のタンパク質量が有意に減少していることを確認した。さらに、PGC-Iaの制御因子として知られるAMPKの活性化剤であるAICARを投与することでその減少を防ぐことができることを報告した。これらのミトコンドリア量の変化においてエピジェネティックな制御機構がどのように関与しているのか、に関しては今のところ不明である。 また、酸化ストレスとミトコンドリアとの関連性について検討するため、先天性の代謝性筋疾患として知られるマッカードル病(糖原病V型)患者の外側広筋から採取したバイオプシーサンプルに関して、タンパクおよび脂肪の酸化ストレスマーカーとして知られるProtein carbonylと4-HNE、さらに抗酸化遺伝子のマスター遺伝子として知られるNrf2のタンパク質量をWestern Blotting法により測定を行った。その結果、酸化ストレスがコントロール群と比べて有意に増加していることが確認された一方で、核内に存在するNrf2タンパク質量も有意に増加していることが明らかとなった。Nrf2の増加はImmunofluorescent stainingによっても確認した。しかしながら、COXやクエン酸シンターゼなどのミトコンドリア酵素活性についてはコントロール群との間に有意な差はみられなかった。
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